ラレコ山への道:国際交流員「目からウロコ」

#20 skipping grades(飛び級)

2020年9月

 アメリカの新学年は8月下旬から9月上旬にかけて始まりますが、年齢に合う学年にならない子どももいます。なぜなら、新型コロナウイルス感染症に関係なく、アメリカには「飛び級」という制度があるからです。

目からウロコ

 日本の学校にはない「skipping grades(飛び級)」の制度は、年齢に合う学年では授業の難易度が合わないという子どもに向いています。飛び級できるかどうかの判断は、基本的に各市の教育委員会の規則によって違いますが、一般的な流れは次の通りです。

 先生は生徒の成績と授業態度に基づき、保護者に「飛び級の勧告」をします。授業の難易度が生徒の能力に合っていない場合、つまり、授業が簡単すぎる場合、生徒が授業中につまらなくなり、学校や勉強に対してのやる気がなくなることがよくあります。そのような状況を避けるように、先生と校長は保護者との相談を行い、そして生徒の意見を聞きます。もし生徒も賛成したら、学力試験を受け(精神診断がある場合もあります)、その試験の結果により飛び級するかどうか決定します。実際、飛び級する生徒はかなり少なく、アメリカでそうした子どもは1%以下です。その上、小学校以外(中学校や高校など)で飛び級するのは、非常に珍しいです。

 飛び級を紹介している私自身、実は小学校1年生の時から5年生まで、上の学年に飛び級していました。幼稚園の入園までにもう2年生の読書レベルに達していて、1年生では5年生のレベルになりました。だから、1年生になった最初の2か月、私は授業中にいつもボーっとしていて、先生は私のことを気にしてくれました。幸いにも、私が通っていた小学校はその年に新しい飛び級事業を実施し始めていたので、正式な飛び級試験を受けずに、2年生の授業に入ることが可能となりました。

 年齢の違う学年に入ることで、同級生と仲良くできるのかという心配もあるかもしれませんね。私の場合は、飛び級する前からの友だち数人も同じプログラムに参加することになったので、2年生の中で私一人が年下というわけではなく、さみしくありませんでした。それに、同級生となった2年生は私を排除せずに、やさしく受け入れてくれました。

 年上や年下という年齢差の意識は、アメリカより日本の方が重視しているかもしれません。例えば、日本では「○○さん」「○○くん」「○○ちゃん」の呼び方などの敬称をみても、年齢差の意識は日本の言葉に織り込まれていることが見えるでしょう。一方、アメリカでは特に小学生の時、年齢差はそんなに意識してないと思います。だから、1 – 2歳年下だったとしても、年齢的な問題はめったに起こらないでしょう。しかし、中学・高校時代に飛び級するとしたら、そのような問題が増えるかもしれません。そういうことから、中学校・高校では、「advanced placement(学力の高い子ども向けの授業)」がほとんどの学校で提供されています。

 私は2年生の学年に飛び級して5年間、年齢に合った学年より難しい授業に参加していました。しかし10歳になった時、父の仕事で新しい都市に引越し、新しい学校に入り、全部が変わりました。転校先の学校教育課の規則では、飛び級試験を受験するのが必須でした。あの当時、両親は大変迷っていました。学業のために飛び級の受験をした方がいいのか? 精神的成長のために同い年と一緒にいた方がいいのか? 父母は私の意見を聞きました。誰も知らない新しい土地に引越ししたばかりの私は、転校に緊張していたので、同い年の学年に入ることに決めました。結果、それは最も退屈な1年間になってしまいました。

 アメリカでは、飛び級についての意見がいろいろ飛び交っています。子どもの社交性を育みたいと思う保護者は、年齢が違う子どもといることがどんな影響を与えるかなどを心配しています。確かに、飛び級の制度の中で極端な場合もあります。例えば、世界一早く大学卒業した人は、6歳の時に1年間以内に高校を終えて、10歳で大学を卒業しました。今でもニュースで「8歳の生徒が高校1年生の学年に入る」というような極端な話を耳にしますが、めったにないケースです。私の同級生で学年を2つも飛び級した人がいて、周りから珍しく思われていましたが、普通に同級生の友だちができていました。

 飛び級をする際、社会的な発達を考慮することは大事ですが、子どもたちの知的好奇心を育むために、より上の学力に挑戦する必要もあると思います。しかし何よりも、大事なのはその子どもの希望とニーズで、それぞれ事情が異なります。学力が高くても、もうできた友だちから離れたくない子どもや、同級生と授業の雰囲気に慣れてきて、新しい学年に入りたくない生徒もいるでしょう。

 飛び級するとリスクがあるかもしれませんが、しないと別のリスクも考えられます。子どもが教育の価値を尊重しなくなったら、その後、学校や社会で成長するのが難しくなるかもしれません。もし日本でも実施されたら、有益になる生徒もいるかもしれません。


[最近、目からウロコが落ちたこと……]

 2020年はとても変わった年になりましたよね。コロナウイルスの状況がまだ落ち着いていないアメリカでは、新学年が始まる8月下旬から遠隔教育を実施する学校が多くなっているようです。パソコンやアプリを利用して、新しい生活を迎えています。
 今年は皆さんと一緒に、今までと違う生活様式を勉強しなくてはいけませんね。スーパーでも家でも、新しい生活を送る方法を習ってきています。自分だけではなく、周りの人の健康も守る必要があるので、テクノロジーを使いながら、世界中のみんなで新しい生活に慣れていかなければいけませんね。

目からウロコ
 外出自粛中ですが、車で出かけて、誰もいない自然を時々楽しんでいます。最近は海岸に行きましたが、海を見るだけで心が癒されます!

目からウロコ
 最近、家で工作をしています。これは「ojo de dios(オホ・デ・ディオス)」と呼ばれるメキシコと南アメリカのお守りのようなものです。徳島県に住んでいる友だちに郵送しました!

(2020年09月 COLARE TIMES 掲載)

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