ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の拾】小野木流・芸術の秋

1999年12月
 芸術の秋……と世間ではいいます。「小野木さんはいつも忙しい」ということになっていて、そう言われて「いやー、ボチボチでんな」などと器用なことを言ってその場を取り繕うことが苦手な僕は、いつも返す言葉がなく絶句。でも、確かにこの時期いろいろあって、忙しいことは事実なので、最近は正直に言ってしまうのです。「ハイ、忙しいです……でも全然儲かりません」
 そこで今回はいつもと趣を変えて、多忙かつ不規則正しい生活の中、時間をさいて毎日欠かすことなく詳細に記述している(頭の中に)プロダクションノートの一部を公開しようと思います。

■1999年10月2日(土)
 静岡県の大東町シオーネで『平成三味線三昧 長唄三味線 vs 津軽三味線』を行う。「伝統と現代の架け橋に」ということで意気投合した、コラーレでもお馴染み[伝の会]と木下伸市さんのジョイントライヴ。評判を呼んでお客様の入りもOK。準備万端、後は開演を待つばかりの15分程前、木下さんから「三味線の皮が破れました」との連絡。数秒後に頭の回線が繋がった僕は「何如なる事態か」を考えると全身が固まった。白いガムテープを貼ってみたものの“穴隠し”程度の効果 。共演の松橋礼香さんの三味線と交換して開演。一曲演奏後、木下さんはお客様に「実は……」とすべてをありのままに告白。逆のこの潔さと爽やかさがよかった。オーケストラだってソリストの弦が切れてコンサートマスターのバイオリンと交換して涼しい顔して完奏。かえって感動を呼ぶなんてことがあるけど、まさにそんな感じだった。1+1が限りなく2にならない舞台の世界、今日は木下さんのパーソナリティとキャラクターに救われた一日だった。

■1999年10月28日(木)
 大田区民ホールアプリコでCD発売記念『福原清彦笛倶楽部Vol.4』を行う(CDは古典空間レーベル第3弾!)。伝統の単なる再現に終わることなく、時代のフィルターを通して何を表現するべきか真正面から向かい合う、というか何をしでかすかわからないアーティスト。「携帯電話の電源オフ云々」のインフォメーションもフツーにはやらない。舞台に置き忘れた携帯電話を鳴らすことが本ベル代わり。慌てたプロデューサーのが舞台に駆け上がって電源を切る。……出たがりプロデューサーの本領発揮の瞬間でした。
■10月から始まった千葉大学文学部での授業。
 「都市文化論」という講義。現代社会と伝統をいかに対峙させるか、芸能を通 して考えるというテーマ。歌舞伎も未体験の学生がほとんどなので各論に踏み込むまでもう少し時間がかかりそうだが、彼らと付き合うこと自体がマーケティングになる。何より授業後終電ギリギリまで学生達と飲むことが楽しい木曜日。

 ……というような今日この頃。やっぱり忙しいか。

(1999年12月 COLARE TIMES 掲載)
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