ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の百九】どうするこの暑さ……いや“熱さ”!

2023年9月

 世界は、暑さを通り越してすでに“熱さ”レベルの夏と格闘中と言えましょう。

 8月11日(金)、すみだトリフォニーホールで、下野竜也プレゼンツ! 音楽の魅力発見プロジェクト 第10回「大河ドラマのテーマ曲 徹底解剖! その2」(主催:(公財)墨田区文化振興財団)が開催されました。歴代のNHK大河ドラマのテーマ曲が下野さんのMCと共に14曲、新日本フィルハーモニー交響楽団により次々に演奏されました。その中に笛と琵琶を用いる楽曲があって今回はそのお手伝いをしました。1曲毎に背景スクリーンには作曲家の写真とドラマ主人公の武将等の肖像画が大きく投影……1963年から始まった大河ドラマへの思い出が時代と共に蘇る仕掛けもなされていて大変楽しめる公演でした。

 静岡、愛知、岐阜……徳川家康に所縁の地域を訪ねると、市役所、劇場や美術館ほか公共施設の広報コーナーには家康に扮する松本潤さんのポスターが目立つばかりでなく、今年の「どうする家康」にあやかって、「どうする〇〇!」と名を冠した様々なイベントや事業が目につきます。大河ドラマの影響力の大きさを実感するとともに、徳川家康や江戸幕府と芸能との関係に思いが至りました。

 室町時代、三代将軍足利義満の贔屓を得た観阿弥(1384没)世阿弥(1443?没)親子によって大成された能は、その後も支配階級であった武士たちに愛されて受け継がれてゆきます。豊臣秀吉の熱狂的な能好きは有名ですが、徳川家康も人質として今川氏に預けられた幼少時から能の稽古を受けていたと言われています。そして永禄年間(1558~70)以降、新春に能の詞章(歌詞)を謡う「謡初」を始め、その後は徳川家の年中行事となったそうです。また、慶長八年(1603)に家康が征夷大将軍となった祝賀イベントとして「将軍宣下能」が催されましたが、これも十四代家茂まで代々の将軍即位の折には行われることとなります。こうして能は幕府の公的な儀式で演じられる芸能「式楽」として定着しました。

 ところで三代将軍家光の時に、幕藩体制をさらに盤石にする「参勤交代」が制度として定められます。全国各地の大名たちが一年ごとに自国と江戸を行き来する…考えただけでも大変な苦労が課せられることになりますが、その上江戸城に登城してきた大名のみならず、江戸の街に集合することになった武士たち同士、あまりにも“お国言葉”が強烈過ぎてコミュニケーションが成立しなかったそうです。そこで幕府は大名たちには謡を必修科目として習わせました。つまり能の語彙や発音を「共通語」と定めたわけです。稽古に打ち込む殿様を見て、仕える武士たちにも広がって行きます。例えば「恐悦至極に存じ候」など、いわゆる独特の“武士言葉”が生まれることになった背景の一つです。ラジオ、テレビ、そしてインターネットなど情報共有の手段がなかった時代ならではのお話しです。

 どうにもならない猛暑が今後の夏の常態になるとも言われています。「どうする地球環境」……本気で考え、日々の生活レベルから行動に移さなければならないレベルであることを実感しています。

特別展「どうする江戸の音楽」
天下泰平の世に花開いた楽器 三味線

2023年7月15日 – 12月12日
浜松楽器博物館
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