ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.10 ベイルートまたもやキャンセル

2001年5月

ブリュッセル公演の翌日、レバノンに行く予定だったのですが、日本を発つ前の1月末に政情不安を理由に公演を延期したいと連絡が入っていました。行ったことのない国なので行ってみたいという思いが強いのですが、紛争のニュースなどを聞くと事故が起こると怖いという思いがあります。しかしこちらからキャンセルしたいと言い出すと違約金の支払いという金銭問題が起こります。折りからエルサレムで小競り合いが頻発していました。どう決断するか悩んでいるところへ先方から安全を保証できないので延期したいと連絡が来ました。パリのエージェントはほっとしながらも仕事が無くなった1週間の滞在費の補償を求め始めました。確かに10人分のパリでのホテル代と賃金は支払わなくてはなりません。ほっとしながらもこの期間を利用して倉庫の整理をすることにしました。

無料で提供してもらっていた倉庫が使えなくなるので必要なものは別の倉庫に移し、使う予定のないものは捨てることにしました。「金柑少年」「熱の形」「縄文頌」「おもて」「ゆらぎ」5作品の舞台装置を捨てました。何というのでしょうか、身を切られるような、胸が痛くなるような、やるせない思いで寂しくなりました。他の人が見たらただのガラクタですが、私たちにとっては貴重な仕事道具であり、歴史が刻まれています。作業の途中で何度も日本に送り返したいという思いに捕らわれましたが、日本の倉庫も今年の雪で屋根が抜けたままです。どうしようもありません。

さて、二日間にわたる倉庫でのやるせない仕事を終えて飲んだくれていると、エージェントから二日後の金曜日に演出家と一緒にウイーンへ日帰りで打ち合わせに行くようにと電話が入りました。山海塾の仕事ではないのですが、2年前にリヨンで山海塾主宰の天児が演出したチエフォフの「三人姉妹」というオペラの再演が今年からパリ、リヨン、ブリュッセルで予定されています。先週ブリュッセルの山海塾公演の時に指揮者のピーターエートボッシュとブリュッセルの劇場下見をしたばかりです。そのとき彼が親しくしているウィーンの劇場の話が出ました。舞台間口が狭いので上演可能かどうかチェックするのが仕事です。結局休日返上でウイーンに行き、ディレクターや技術者とミーティングし、技術的には公演可能とその場で返事をしましたが、その時タイムスケジュールを見せられました。それを見ると前後を別の公演に挟まれていて準備期間が1週間しか有りません。出演者も4人新顔になっています。私にはこれは不可能と思えました。

スケジュールのことはこの作品の販売権を持つリヨンオペラに打診するよう話して劇場を後にし、知人の小沢さんと喫茶店で会うことにしました。この人は指揮者の小澤征爾の甥に当たる人で、劇場運営の勉強のためにウィーンに留学しているのでいろんな情報を聞き出そうと思ったのです。いろいろな話を聞きましたが、音楽畑ではない私にとってはオペラのシーズンではない時期、フェスティバルの一環として予算が付くときに現代的な音楽と演出の「三人姉妹」を上演しようとしているのだなという事が判ったぐらいでした。
象牙の塔という言葉がありますが、音楽界もそれに似た巨大な権力闘争があるように思われます。つまらぬ争いに巻き込まれないように距離を保ちながら仕事をしたいものです。

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