ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.65 「山海塾」2022年秋 新作「KOSA – between two mirrors」コロンビア、ブラジル公演

2023年6月

 10月30日、メキシコからコロンビアへの移動日。朝10時出発予定なので準備していると、複数の時計で時間が一致しません。少し慌てましたが夏時間が終わり、寝ている間に1時間遅くなっていました。何のインフォメーションもなく、スマートフォンが勝手に現地時間を修正していました。
 コロンビアのプレゼンターは前回と同じく「Asia Iberoamerica Cultural Foundation」。空港でプログラミングディレクターのエマと会い、ホテルに移動しました。翌日初めての劇場「Teatro Mayor Julio Santo Domingo」でテクニカルミーティング。劇場の近くには大学やショッピングセンターがあり、文化地域のようです。車で30分ほど離れたホテルの周りは高層ビルが建ち、ショッピングモールなどがあるビジネス街となっています。途中の道はかなりでこぼこで、車は器用に高速で蛇行運転します。劇場スタッフは皆若く、朝9時から夜11時までの仕事を途中で交代します。公演中、大黒幕が昇降するのですが、毎回担当が変わるので毎回綱元のリハーサルを行いました。仕込みはスムーズに行えたので、久しぶりに通し稽古。11月4・5日、『KŌSA』公演。

 11月6日、ボゴタからメデジンへ飛行機移動。前回2011年は1日がかりのバス移動だったのですが、今回は午前中に移動し、午後から仕込み開始。見覚えのあるスタッフが数人います。「Teatro Metropolitano」はレンガ造りの非常に大きな劇場で、舞台前から8mほどプロセニアムのレンガ壁となっていて通路があります。舞台前から客席までも4mほど離れているので、プロセニアムの奥にアクティングエリアを設定すると、遠すぎて照明ブースからの視認も難しくなります。天井反響板から一文字幕が吊ってあったり、照明、一文字幕、袖幕が共吊りだったりと制約の多い舞台です。吊り物バトンは電動で速度は一定、メモリー機能もありません。出来る作業が限られるので時間的には余裕が出来ました。バトン操作は前回と同じ人、技術スタッフは皆とてもフレンドリーで、空港の送迎も音響スタッフでした。

 11月8日、『KŌSA』公演。強い雨が降ったので開演を15分遅らせ、舞台袖からは見えませんが、広い客席が奥まで埋まりました。拍手が鳴り止まずカーテンコールを4回行いました。ダンサーの舞台アクセス経路がイレギュラーになりましたが、コンサートホールや野外劇場でも上演可能と確信しました。終演後、劇場と大学のディレクトリス(支配人)が楽屋に来て、ダンサー全員と挨拶、記念写真を撮り、とても良い交流となりました。

 11月9日、メデジンからボゴタ経由でサンパウロに移動。馴染みのあるホテル・トランスアメリカと隣に立つ「Teatro Alfa」。2000年4月、『HIYOMEKI』公演で初めて来た時は、上流階級の人たちが来るアメリカナイズされた場所のように思えました。あれから22年、ホテル・トランスアメリカは取り壊してマンションになるそうです。劇場と一体ですので、劇場も無くなるのだと思います。勝手知ったる劇場で馴染みのスタッフと10日朝から照明吊り込み、午後フォーカス開始とスムーズに進みました。夕食は近くのレストランに行き、帰りに以前からよく行っている飲み屋でビールやカイピリーニャ(ブラジルのカクテル)を飲んでいると、別行動でシュラスコ(肉料理)を食べてきた若手ダンサーが合流しました。皆でわいわいやっていると店のお父さんも思い出したようで、おつまみと一緒にカイピリーニャをどんどん出してきます。ひとしきり騒いだ後、ダンサーと別れ劇場に戻り、サウンドチェックの準備をしていると、観客席後部のサウンドコンソールのあたりが騒がしいのです。なんとさっきまで一緒に飲んでいた音響スタッフが酔い潰れています。病気では無くカイピリーニャを沢山飲んだだけだと話すと、劇場スタッフが布団を床に敷いてくれました。サウンドチェックは中止して隣のホテルに連れ帰りました。

コロンビアのメデジンにある劇場「Teatro Metropolitano」

ブラジルのサンパウロにある劇場「Teatro Alfa」

 仕込み2日目、昨夜の酔い潰れ事件は劇場関係者に知れ渡り、社食のおばさんたちにも「カイピリーニャには気をつけなくっちゃ」と言われました。午後から若手ダンサー3人を連れて車で1時間ほど離れたスタジオに行き、2時間のワークショップ。通訳の日系二世、ルシオ久保という男性からブラジルでの舞踏の歴史など聞くことが出来ました。劇場に戻り、夕食後、皆疲れが溜まっていましたが通し稽古を行い最終確認しました。私は公演中舞台袖にいるので、ツアー後のテクニカルライダー修正の情報は客席から指示を出す通し稽古で確認します。新作『KŌSA』は事前の通し稽古が出来ずに、9月30日、スイスから始まり、フランス、メキシコ、ブラジルと周り、幾つかの手直しを経て完成。1日仕込みや野外公演のめども立ちました。

 11月12日、『KŌSA』公演初日、大勢の観客が来てくれました。夜ホテルでパソコン操作をしていると電源のACアダプターが給電しないようです。恐怖に襲われながらバッテリーが残っている間にデータ保存し、別のパソコンでメール送受信や作業が出来るように徹夜で設定しました。

 11月13日、公演2日目。早朝からエージェントのピエールに呼び出され、日本の制作担当者から夜中に、WhatsAppで連絡があった帰国に関する厚生労働省のインフォメーションを検討しました。それによると1週間前に入国規定が変わり、コロナワクチン接種を3回行っていない人はPCR検査を受け陰性証明書を取得する必要があるとのこと。インターネットで調べると以前のような成田空港での待機では無く、そもそも帰国便に乗せてくれないということです。WhatsAppで制作担当者に直接電話をすると、抗原検査では不可で、PCR検査陰性証明書が絶対条件とのこと。実は私の忠告に従わなかったダンサー2人がワクチン接種を時間的に2回しか受けていないのです。劇場スタッフの協力で日曜日でも受けられる病院を予約して、陰性証明書を手に入れました。
 夕方6時からの最終公演も多くの観客が来てくれました。公演後、劇場のテクニカルディレクター、現地エージェントと全員でシュラスコを食べに行き、皆でワインやカイピリーニャを飲みました。帰国は翌日夜の便ですので、酔い潰れても大丈夫です。

 5カ国を回るツアーは国ごとに新型コロナ感染症に対する規制が異なり、メンバーが感染するとその段階で移動出来なくなる状況でした。入国や出国に際してスマートフォンでの事前登録も必要でした。エージェントやメンバーとの連絡はスマートフォンのWhatsAppで行い、帰国に際してもスマートフォンに接種証明書、税関申請書を表示して入国手続きをする状況でした。スマートフォン操作は苦手なのですがそんなことを言っていられない時代になりました。

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