ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の六拾参】秋風と共に……文化事業一考

2010年11月

何の木の 花ともみえず 匂いかな    松尾芭蕉

9月半ばまで、このまま永遠に夏が続くのかなとさえ思っていました。漂う金木犀の香りに今年はひと際秋を実感した次第です。
8月から10月にかけて、日本の楽器や音楽に初めて触れる若い世代の皆さんに向けた、意義あるイベントや公演が相次ぎました。
「聴いて、唄って、弾いて、吹いて。邦楽の楽しさを発見する3日間」と謳い、8月20日から、水天宮ピットという元高校の校舎を利用した演劇の稽古用スタジオを用いて『邦楽ワンダーランド』というイベントを行いました。箏、三味線(長唄、清元、義太夫、津軽)、尺八、琵琶、胡弓、笛、鼓、大鼓、太鼓、さらに長唄や義太夫など唄や語り……日本の伝統音楽に初めて触れる皆様を対象に、人間国宝がおくる前夜祭ライヴ、各ジャンル若手奏者たちによるミニコンサート→体験したい楽器の部屋へ移動してのワークショップ、職人さんを招き楽器製造の現場を見学(夏休みの自由研究対象)、若手邦楽器ユニットによるエンディングライヴ、邦楽器体験スタンプラリー等々、炎天下の下町は大盛り上り。世代を超えて2,000人以上の方々が、驚きと感心の溜息をもらしつつ、喜々として楽器と格闘する姿がありました。

このイベントは、私たちが国立劇場の皆さんと共に制作、主催は東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団で、昨年からスタートした「東京発・伝統 WA 感動」というイベントの一環で行われました。

琵琶を体験する司会の若手落語家・林家木久蔵さん

邦楽ワンダーランド ミニコンサート琵琶篇「琵琶を体験する」司会の若手落語家・林家木久蔵さん

東海村小学校芸術鑑賞教室「和楽器コンサート 和音(おと)をあそぶ!」を10月6日、茨城県の東海文化センターで行いました。東海村内小学校6校4年生以上の児童が、午前、午後2回にわかれて楽しんでくれました。お堅い演奏会形式を排し、この公演用に舞台セット組み、全体を芝居仕立てで進行する演出。津軽三味線ユニット「あんみ通」、アメリカ人の箏&尺八ユニット「カート&ブルース」、和太鼓兄弟ユニット「は・や・と」の3組が、ナビゲーター役の女流落語家・林家きく姫さんと絡みつつ、会場の“小学生目線”で楽しく展開。緊張と弛緩を交互に仕掛ける「90分絶対に飽きさせない作戦!」は大成功。「わかる、理解する」ではなく「感じる!」ステージが実現できたと自負しています。
この公演は、東海村文化・スポーツ振興財団から企画・制作を依頼され、東海村教育委員会の主催で行われたものです。
伝統芸能というジャンルにとって、「普及」を旨とした実験的公演は現在的に不可欠であり、提供する側としては、できる限り実施した「実績」よりその「実効」を求めたいものです。さらに、地域によっても抱えている事情はすべて異なるゆえ、地域の“顏”に合わせた様々な“実験”を続けてゆく必要があります。ゆえに、これらの諸事情と向き合って下さる『自治体の文化事業』こそ、私たちにとって最大のパートナーであると確信しています。全国的に文化予算の削減が現実的な現在を、秋風と共に心から憂うる今日この頃です。

津軽三味線、箏&尺八、和太鼓のコラボレーションシーン

和楽器コンサート「和音(おと)をあそぶ!」ラストのコラボレーションシーン


邦楽ワンダーランド
胡弓初体験の司会の若手落語家・林家木久蔵さん

ミニコンサート胡弓篇「胡弓初体験!」
司会の若手落語家・林家木久蔵さん

ワークショップで胡弓と格闘する参加者の皆さん!

体験ワークショップ「胡弓と格闘!」

熱気あふれる琵琶の体験ワークショップ

熱気あふれる「琵琶の体験ワークショップ」

和楽器コンサート「和音(おと)をあそぶ!」
和楽器コンサート「和音(おと)をあそぶ!」の様子

和楽器コンサート「和音(おと)をあそぶ!」の様子

和楽器コンサート「和音(おと)をあそぶ!」の様子

(2010年11月 COLARE TIMES 掲載)

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