ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の四拾九】コラボレーション

2007年11月

 今年の猛暑のおかげで、いつでもどこでも「暑い」ものという感覚が心身共に刷り込まれてしまって、ついTシャツのまま飛び出し「ワッ、寒!」と外の涼しさに我に返るこの頃。

 秋の月 山辺さやかに 照らせるは 落つるもみぢの 数を見よとか (詠み人知らず 古今和歌集)
秋の月が山辺をこんなにも明るくはっきりと照らしているのは、落ちる紅葉の数を見よということなのか。

演奏に合わせて揮毫する書道家

 ようやくそんな秋を実感できる季節になりました。

 最近、アーティストのプロフィールに目を通していると、「ジャンルを超えた活動を展開している」とか「異ジャンルとのコラボレーションを盛んに行っている」などの表現が実に多く見受けられます。「コラボレーション」……辞書では「共同創造」などと出てきますが、私たちの仕事の現場では「自らのジャンルとは異なるフィールドで活躍するアーティスト同志が、同じ着地点を目指して、身につけた技や表現をすり合わせ、ぶつけ合って、新たなる世界をつくり出すこと」と体験的に言うことができます。

 明治になって尺八が参入して以来、現在では「箏・三絃(三味線)・尺八」が一般的ですが、古くは江戸時代中期に生まれたといわれ「箏・三絃・胡弓」が合奏する「三曲」の世界(五線譜のような“共通言語”はなくそれぞれが異なる譜面を使用しています)。近年では、盛んに行われる津軽三味線と和太鼓の競演なども、もともと多くが独奏楽器として受け継がれてきた邦楽器の世界ではコラボレーションと言えるでしょう。もちろん現在では、和洋の様々な楽器が、軽々と垣根を超えて先進的な音楽を創り出していることはご存じの通りです。

 9月22日から10月8日までの土日祝日、恵比寿ガーデンプレイスにて「書楽八十奏(しょがくはちじゅうそう)」というイベントが行われました。国内外で活躍する書道家8名と音楽とのコラボレーション。新進気鋭の武田双龍さんには二十五絃箏の中井智弥、世界的に活躍する柏木白光さんには笙の真鍋尚之、重鎮・金田石城さんには尺八の岩田卓也が挑みました。数メートル大の紙に気合諸共に揮毫(きごう)する書道家と全身全霊を込めて演奏する邦楽器プレイヤー。普段は接点のない世界、お互いが「気と気」をぶつけ合う実に息詰まる瞬間……。譜面や筋書きとは無縁の予測のつかない創造物が生まれる瞬間に立ち会える面白さに、仕事を忘れて興奮してしましました。アーティスト同志が、そして観客の皆さんが、言語化できないエネルギーを共有し合うことのできる素晴らしい時間と空間。真のコラボレーションの意味を体感できた意義あるイベントでした。

演奏に合わせて揮毫する書道家 演奏に合わせて揮毫する書道家

(2007年11月 COLARE TIMES 掲載)

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