ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の四拾八】怨めしや~ 晴らさで おくべきか

2007年9月

 草木も眠る丑三つ時、黒部のとある寺の鐘がゴ~ン……「怨めしや(1)~、生き変わり死に変わり、恨み晴らさで(2)おくべき(3)か(4)~!」日本の夏の世の定番、幽霊登場シーンの名セリフです。

 猛暑の日々、コラーレの学習ゾーンで頑張る受験生諸君のために、このセリフの文法的解釈を……。

(1)<や>=詠嘆の終助詞で、訳は「ダナァ、コトヨ」。
(2)<未然形+で>=打消しの接続助詞「~ナイデ」。
(3)<べき>=この場合は可能の助動詞「べし」の連体形、訳は「コトガデキル」。
(4)<か>=係助詞の文末用法。この場合は、相手に答を要求しない強調用法の反語。訳は「ドウシテ~カ、イヤ~ナイ」。

 つまり、「怨めしいなぁ、生き変わっても、死に変わっても、この恨みを晴らさないでおくことができようか、いやできない!」と楽しみを極めた浄められた土地(=極楽浄土で仏に成る=成仏することも拒否した強い霊)が、恨みの対象に恐怖の感情を呼び起こし、その相手を追い込むという方法で復讐を仕掛けるわけです。背筋がゾーッとする、そこで「怪談=納涼」となるわけです。

「落語・講談 怪談ばなし」CDジャケット
 若手歌舞伎俳優・尾上菊之助や黒木瞳らが主演、落語の『真景累ヶ淵』「豊志賀の死」を原作に映画化した『怪談』(中田秀夫監督作品)が話題になっています。江戸のしがない煙草売り新吉が、富本節の師匠・豊志賀と出会い恋に落ちる。相手を愛しく思うほどに嫉妬深くなってゆく豊志賀は、ある日新吉とのいさかいで三味線の撥が顔にあたり、美貌に負った傷がしだいに醜い腫れ物となり、正気を失ってゆく……。献身的に看病する新吉だったが、彼を慕う豊志賀の弟子・お久と江戸を出ることを決意。そんな新吉を恨みながら死んでいく豊志賀の深い情念が、新吉と彼が出会う女性すべてに悲劇をもたらす……というストーリー。「芝浜」「文七元結」「死神」など数多くの名作落語を作り、“落語の神様”と言われる三遊亭円朝(1839―1900)が21歳の時に作ったといわれているのが、この『真景累ヶ淵』なのです。

 暗闇が消えた都会。24時間いつも明るくて、それこそ“草木も眠れない”都心では、いったいどこに“出たら”よいのか、ただでさえ迷ってる幽霊がさらに迷ってしまうのではないかと、無用な心配をしてしまうわけです。そして地球上のあらゆる人間社会で次々と引き起こされるさまざまな出来事を目の当たりにするにつけ、人の心の闇こそ消えることはなく永遠なのだなと、つくづく感じる今日この頃です。

 ところで「怪談」は、落語や講談などの語り芸で聞くことをお勧めします。ビジュアル的に受け止めた実際の映像もさることながら、聴覚的に受け入れ、心の内なるスクリーンに自らの想像力で映し出された映像の印象も強烈です! 猛暑で眠れない日々の納涼に如何でしょうか!




おすすめCD
 ■「落語・講談 怪談ばなし」(CD9枚組)
 ■圓生百席(55~58)「真景累ヶ淵」
 ■桂歌丸「真景累ヶ淵」(CD5枚組)

(2007年09月 COLARE TIMES 掲載)

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