ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の四拾六】今も昔も、大波小波

2007年5月
 先日、山手線に揺られていると、かすかに懐かしい香が漂ってきました。10数年前に付き合っていた人の好んだ、確かスペインのオードトワレの香……思わず周りを見回してしまいました。しかし残念ながらそれ以上のドラマはありませんでした。

 五月待つ 花橘の 香をかげば  昔の人の 袖の香ぞする
 『古今和歌集』(『伊勢物語』六十段にも)に収められた名歌をつい思い出す季節になりました。さまざまな大波小波を乗り越えて、人間社会の織りなすドラマは、1000年という時を隔てても変ることなく連綿と続いているのだなぁ、と実感させられます。時代を経ても文化が異なっていても相通じ、インパクトを与え得る作品をこそ「古典」と言うのでしょう。

 文学、演劇、音楽、工芸……あらゆる創造物に古典は存在します。過去を顧み、その過去を現代と対峙させてはじめて未来が見えてくるのではないでしょうか。歴史を学ぶのと同じく古典を学ぶ理由がそのあたりにあのではないかと考えるのです。

横浜市の選挙啓発イベントに出演し、ステージで演奏する<あんみ通>のお二人

今回の統一地方選挙に向けて、横浜市の選挙啓発イベントに出演した<あんみ通>


 統一地方選挙が行われました。全国的に前進、向上に向けて各方面で変化が求められている中での選挙。多くの地域において経済、教育、福祉などで格差是正が叫ばれていますが、文化行政においても大きな課題と向かい合わなければならない現実があります。

 文化振興は各地域の大きな課題のひとつですが、文化の発信基地としての“顔”を持つ公共ホールは、ジャンルを問わずさまざまな芸能をさまざまなカタチで提供し続ける使命を担っています。そこに文化予算が活かされているわけです。その文化予算が大幅に削減されつつあります。輪をかけて進行する地方自治体の合併。一つの市町村にいくつもホールは必要ないという理屈がまかり通ります。さらに指定管理者制度。簡単に言えば自治体施設管理・運営の民営化です。当然の結果として、公共ホールにおける採算重視の傾向が助長されるわけです。今、この大波を乗り越え、時代との接点づくりに踏ん張らなければと思っています。

ステージで演奏する<あんみ通>のお二人に聴き入る観客の皆さん  「企画はとても面白いと思うけど、この出演者はテレビに出てるの?」と言われて悲しくなったことがあります。メディア露出による知名度が価値観の日本の社会においては、その機会の少ない伝統・古典芸能といわれるジャンルは、集客の不安という理由から自主事業から除外の対象になり易いわけです。しかしながら、日に日に日本文化の色が薄まってゆく現在、自らの文化的アイデンティティーを体感できるジャンルであるからこそ向かい合う価値は大きい。プロモーターが仕切るいわゆる全国パッケージツアー公演のようなあり方も内容的・経済的に相応しくない。ゆえに公共ホールこそ伝統・古典芸能の最大かつ最良のパートナーであると考えられるのです。

(2007年05月 COLARE TIMES 掲載)
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