ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の百壱】伝統芸能……その担い手

2019年10月

人の営みや社会活動の多くは、有形無形の「継承」によって成り立っていると言えましょう。

形あるものと異なり、無形の事象における継承には多分に精神的エネルギーを伴うゆえに、その価値が注目されるのではないかと思います。とくに伝統芸能など、「伝統」という冠が付与されているジャンルの「継承」には、変遷を重ねる時代の中で、常に困難と戦い続けて来た歴史と同様の未来があります。

歌舞伎の舞台袖で、「子役にみんな持って行かれちまった!」と苦笑いをする主役俳優の顔が浮かびます。『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』「御殿」の千松(せんまつ)、『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』「実盛物語(さねもりものがたり)」の太郎吉(たろきち)、『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』「寺子屋」の小太郎など、歌舞伎の子役は、芝居の中で観客の感情を大きく左右する重要な役割を果たしています。子役の名演が客席の涙を誘い、どよめきを呼びます。有名幹部俳優の子息をメディアがとり上げて注目される例は以前から多々ありますが、現在では歌舞伎関係者の子供に限らず、一般家庭のお子さんでも、礼儀作法、発声、日本舞踊、所作などの訓練を受けた子供たちが選ばれて多数出演しています。また子役に限り女の子の出演も許されています。

狂言でも子方が活躍する演目があります。狂言の世界では、「猿に始まり、狐に終わる」という言葉が有名ですが、これは『靭猿(うつぼざる)』の猿役で初舞台を踏んだ子方が、『釣狐(つりぎつね)』の狐役を演じて初めて一人前の狂言師になるという意味です。『靭猿』では狂言の演技の基本である物真似とリズム感を学ぶなど、面(おもて)をかけた狭い視野の中で厳しい修業が始まります。一方、技術的にも精神的にも高度な実力が要求される大曲が『釣狐』。今回のコラーレ公演に出演される、お馴染みの石田幸雄さんや野村萬斎さんも披(ひら)いていますし、万作さんの『釣狐』は今や伝説と言われています。

「継承」が求められるのは演じ手だけではありません。伝統芸能を支え、次世代に伝えるのは受け手である観客ありき……であることも自明のことです。古典作品が生まれた時代とは生活スタイルが激変してしまった今においては、セリフや所作の意味さえ大人であっても理解に及びません。そこで、公演の事前に楽しくわかり易く解説をするレクチャー&デモンストレーションが企画されたり、映画のように字幕を用いるなど、伝える工夫は様々行われています。子供に対しては、理屈抜きに体感してもらえる体験ワークショップの実施こそ、伝統芸能の「創客」には有効不可欠な方法であり、積極的な取り組みが求められているのです。




古典空間 古典空間
2019年8月31日、小田原市民会館にて『コノカイズム』公演
2011年3月、コラーレでも公演を行った日本舞踊家集団・弧の会。公演前に地域の子どもたちにワークショップを行い、本番前に一緒に踊るコーナーを設けています。公演後のカーテンコールで、熱狂のお客様と共に記念撮影も! 参加した子供たちが将来の演じ手、受け手となってくれることを願って丁寧に実施しています。

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