ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の九拾九】4月21日、いざ「明日(あけび)の稚児舞(ちごまい)」へ

2019年4月

古典空間

黒部市宇奈月町にある「法福寺」。奈良時代(806年)創建とされる古刹です。境内にある樹齢400年と言われる「明日の大桜」も地元の方々に愛されています。その法福寺に伝わるのが「明日の稚児舞」。下村(射水市)の賀茂神社、婦中町(富山市)熊野神社の稚児舞とともに『越中の稚児舞』として国の重要無形文化財の指定を受けています。黒部市が誇る郷土芸能と言えましょう。

この稚児舞は、毎年4月の第3日曜日(今年は4月21日)に行われる観音祭で奉納されます。平安の昔、宮廷や寺院などで、笙しょう、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)などの雅楽器が奏でられる中、荘厳な装束をまとった専門の楽人たちにより舞われていた「舞楽(ぶがく)」。その後各地に伝播して地域色が加わり、様々な郷土芸能として姿形を変え、今に伝わっているのです。

伝承されているのは、「矛の舞(ほこのまい)」「太平楽(たいへいらく)」「臨河楽(りんががく)」「万歳楽(まんざいらく)」「千秋楽(せんしゅうらく)」の5曲。舞楽や雅楽の演目名がほぼそのまま使われていますが、演奏は雅楽器ではなく笛と太鼓が用いられます。舞い手の稚児は、10歳から14歳までの男子で、「矛の舞」以外は4人で舞います。そして、無垢な子供は神の使いであり、地の穢れには触れさせてはならないという風習より、僧侶とともに本堂に参拝し身を清めた稚児たちが、大人に肩車で担がれて舞殿へ上げられる場面も見どころです。北陸地方で、神社ではなく寺院における稚児舞は稀少であることも注目に値します。

稚児舞の後には勇壮で厳粛な「火渡り神事」も行なわれ、一般参加もできます。こうした儀式に参加して身を祓うと、改めて新鮮な気持ちになり身が引き締まるのが不思議です。また、明日の大櫻蕎麦まつり実行委員会の皆さまにより地元のそば粉を使った蕎麦も振る舞われるそうです(但し先着順)。

この稚児舞は地元の「明日稚児舞保存会」の皆さまによって伝承されていますが、このように郷土芸能を大切にしている地域にこそ大きな価値を感じます。経済効果最優先の時代、少子化、過疎化の中での保存・伝承の背景には、他所からは見えない大変な努力があることでしょう。しかし地域へのアイデンティティ、地元への求心力として伝承されてきた無形の文化であることは間違いなく、この稚児舞に参加した子供たちが、地域が持っている価値を再認識し、地元を見直す将来につながるのかも知れません。

2014年から富山県公立文化施設協議会・市町村館支援事業アドバイザーというお役目をお引受して5年。2018年度で終了となりますが、この間、富山に通ったこと数知れず、様々な人々、すばらしい景観や自然、心身共に酔わせてくれる美味なる食材や酒……そして多くの郷土芸能との出逢いがありました。よそ者視線からは何とも羨ましく、富山県内の二つの「まち」が、郷土芸能とその芸能を産み出した「まち」を紹介し合いつつ交流を図る『とやまのたから』という文化事業を提案し、応援させていただきました。今年で5年目を迎え、全国からも注目されています。その第1回目はコラーレで実施され、お招きした「明日稚児舞保存会」の子どもたちの愛らしい舞姿を、昨日のことのように思い出します。


観音祭 明日稚児舞

開催日:毎年4月
2019年4月21日(日) 9:00 – 17:00
場 所:明日山 法福寺(黒部市宇奈月町明日836 TEL. 0765-65-0526)

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