ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の八拾七】伝統文化と公共ホールの未来(その1)

2016年3月

1995年11月3日、国本武春による「うなりまSHOW」で、コラーレはスタートしました。

伝統芸能と今をつなぐプロジェクト「古典空間」の公共ホールにおける初めてのお仕事は、1995年、黒部市国際文化センター コラーレのオープニング事業、先日惜しまれつつ他界した浪曲師・国本武春の「うなりまSHOW」でした。以来コラーレとは20年のお付き合いになります。その後も“コラーレ”の名前の由来通り「地域文化創造発展の場」として、黒部という地域にそして人々に実に様々な文化を創り、発信し続け、2009年、特にその功績のあった公立文化施設を顕彰する一般財団法人地域創造JAFRAアワード(総務大臣賞)を受賞しました。全国に3000以上存在する公共ホールの“モデルケース”となった訳です。

コラーレとのご縁をきっかけに、全国各地の公共ホールの皆さんとお付き合いをするようになって、実に多くの事を学び、考え続けることになりました。

この20年の間に、公共ホールの在り方は確実に変化しつつあります。「変化」というより、真の在り方を求めて階段を昇り始めたと言うべきなのかも知れません。めまぐるしく変貌する社会、しかも地域毎、施設毎にすべて風土的・歴史的な背景が異なるので、当然「真の在り方」もそれぞれ異なってしかるべきです。ゆえに「地域の活力を“文化”で担う」という価値観の共有こそ有意義なのです。

しかしながら「言うは易し」であり、「価値観」自体やその築き方が見えなかったり、築けても「共有」に費やす多くの時間や労力が、組織や担い手にブレーキをかけているのです。文化がすべての後回しにされ続けて来た社会のどこに突破口を開けるか、主に公共ホール事業担当者の皆さんのための研究会が、例年2月、渋谷区代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターで催されています。「全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2016」、今年も全国から実に多くの方々が参加され、活気溢れる3日間でした。

“今更ながら”の感は否めませんが、2020年のオリンピックを契機に「伝統文化への着目、普及・振興」が、改めて政府をはじめとする行政諸機関より叫ばれています。しかし、日本の伝統文化の色彩が日々希薄になって行く現在、具体的に何をどうしたらよいかが解らないのが全国的現実です。今回、伝統芸能の舞台づくりに携わってきた立場から、実践例の紹介や未来への提案など、現状打破のための討論に登壇してほしいと舞踊評論家・平野英俊さんよりお話をいただき、セミナー講師として参加しました。

文化振興、特に伝統文化の普及振興は、「地域文化と向き合う事」と実は一体である、という想いをこの数年来強く抱いています。地域には、“限りなく不可欠”の行事や祭礼、それに伴った芸能があります。祭などに向き合い参加することが、地域と物理的にも精神的にも繋がっていて、この地域こそ自分の居場所であり拠り所であると体感できたはずなのです。つまり、祭は地域への「求心力」だったのです。

近年、経済の論理がそうした価値観を上回り、法律を変え、制度を変え、例えば規制緩和により、「まち」に大型ショッピングセンターができた。その結果、「まち」の構造に大きな変化を来し、主に若い世代を中心として、求心力としての祭に参加する意味を見失ってしまったのです。毎年欠かさず祭を実施するということには大変な労力がかかります。知識や方法の習得、そして人と人との関係性づくりなど並大抵ではありません。それらが、ひと時代前は、「若者宿」という場所で行われていました。「まち」と祭を担う若者たちが常に集う場所です。「まち」の求心力に吸い寄せられ、祭の底に流れる想いも、良き事も悪しきを知って良きに向かう事も、先輩から後輩へ伝え、受け渡す機能を果たしていました。

交通網の発達とインターネットの普及に代表される現代社会の在り様は、その機能自体を退化させてしまったのです。同時に、「まち」の求心力としての祭礼や芸能に参加する意味も風化させてしまったのです。「伝統」の本質的な意味を体感できる「地域に伝わる諸芸能」に触れたことのない、つまり「伝統文化を受け入れる素地のない」子供たちに、伝統芸能ワークショップなどを施しても一過性のもので終わる可能性が高くなりつつあるのです。

今、新たに「まち」の求心力となり、人々が集う「若者宿」としての役割を担うのが公共ホールなのではないか、という提言を端緒に2時間の事例紹介と討論が行われたのでした。その中で、昨年10月にコラーレが実施した「とやまのたから2015 黒部×砺波」公演も、まずは地元の皆様に自らの伝統芸能を知っていただく実践例としてもちろんご紹介しました。次世代に向けて、特に伝統文化、伝統芸能の継承と展開に、公共ホールの果たす役割は非常に大きいのです。

<続く>

[写真]1995年11月3日、国本武春による「うなりまSHOW」で、コラーレはスタートしました。




古典空間 古典空間

「全国劇場・音楽堂等アートマネジメント研修会2016」の様子。昨年コラーレで開催した「とやまのたから 2015 砺波×黒部」を紹介しました。




古典空間

「とやまのたから 2016 砺波×南砺」が決定!
富山の皆様自らの手で、富山県の誇りと言える無形の文化を紹介し続けていただくことを強く願うのです。
>> チラシをダウンロード(PDF形式/733KB)

 

 

 

 

 

 

 

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