ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の参拾弐】秋の夜長に

2004年10月
 寝苦しかった夏も去り、秋の涼風が心地よく頬を撫でる……そんな季節となりました。

秋の夜長のながながと 痴話が嵩(こう)じて背(せな)と背(せな)   晴れて差し込むれんじ窓 月が取り持つ縁かいな
 これは江戸時代の流行歌<端唄(はうた)>の一節。長唄・清元・常磐津・義太夫・新内・箏曲・地唄・小唄・端唄等、日本の伝統的な音楽にはどれほど月を歌ったものが多いことでしょう。
旧暦9月15日はみんなに待ち望まれていた満月「望月」、16日はやや遅れてためらいながら出る“いざよふ”月「十六夜(いざよい)月」17日は、19:00頃まだ薄明かりの残っているころ立って待つ月「立待(たちまち)月」、18日は前日より30分ほど遅く出るので居間や縁側に座って待つ月「居待(いまち)月」、19日はさらに遅く20:00過ぎに出るので、寝るにはちょっと早いけれど「臥待(ぶしまち)月」「寝待月」。そんな心で月を待った古典の時代を生きた人々。豊かな「想像」力が、時を越え所を越えても胸にしみる「創造」につながったのでしょう。

<あんみ通>による“ミニ・ワークショップ <あんみ通>による“ミニ・ワークショップ  さて、夏休み真っ只中の8月25日、群馬県の玉村町文化センターで、中学生を対象にした津軽三味線のコンサートが行われました。出演は今注目の女性デュオ<あんみ通>。安仲由佳の力強い三味線と金田一公美のパワフルな民謡と三味線、そして二人の明るいキャラクターで地元の中学生と楽しいひとときを過ごしました。最近、音楽鑑賞教室等、学校主催の伝統的な音楽や楽器のコンサートが非常に多くなっています。

 2002年から実施された「新学習指導要領」により、中学校の音楽の時間で和楽器が必修になりました。そして昨年4月からは高等学校でも。一部を紹介すると、「表現」では「我が国の伝統的な歌唱法及び和楽器を含めて扱うようにする」とあり、「鑑賞」に「主として箏曲、三味線音楽(歌い物)、尺八音楽などを扱うようにする」と明記されています。明治維新以来、公の教育の中でこうしたことは初めてのことであり画期的な出来事であると思っています。

 音楽教育、さらに将来の日本文化の発展にとって素晴らしい展開が期待できる一方、さまざまな問題と向かい合わなければならない現実も存在しています。現在、学校の音楽の先生は、西洋音楽を勉強しなくてはなれないシステムになっていて、和楽器を専門的に学んだ先生はほとんどいないのが現状です。また、週5日制、総合的学習の時間の設置により、音楽の授業時間数自体が減らされています。さらに輪をかけて、予算削減……肝心な楽器をどのように調達するのでしょう! こうした荒波の中、全国各地域の自治体や学校では子供たちの未来のため、前向きな必死の努力が繰り返されているのです。

<あんみ通>による“ミニ・ワークショップ <あんみ通>による“ミニ・ワークショップ  子供たちにとって音楽は、「音を楽しむ」科目であって、「音を学ぶ」“音学“であってはならないはずです。楽しく興味深く和楽器に触れてもらう仕掛けとして、まず高度な演奏技法を身に付けた、彼らと同じ視線に立って向かい合ってくれる若い和楽器プレーヤーのワクワクするような演奏に触れてもらうことを提案します。「音楽を鑑賞して理解する」のではなく、まずは「カッコイイ!」と感じてもらうことが音楽教育のスタートなのではないでしょうか。大切なのは当の子供たちのモチベーションなのです。学校への出前コンサート、大々歓迎です。

 秋の夜長に、黒部の透明な夜空に浮かんだお月様を想いつつ……。

写真)筆者が講師を勤める共立女子大学での授業風景 <あんみ通>による“ミニ・ワークショップ”

(2004年10月 COLARE TIMES 掲載)
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