ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の弐拾七】暑くない夏と熱かったロシア公演

2003年9月

ロシア公演の会場の様子
 ギラギラ照らす太陽、俺たちの季節、夏!……はどこへ行っちゃたんでしょう? 暑きゃ暑いでブーブー言う私たちではありますが、やはり来るべきものが来ないと私たちの生活に支障をきたします。今年は世界的な異常気象と言われています。気象が自然現象なので仕方がないとはすでに言えません。ヒートアイランド現象などに象徴される地球温暖化は、その原因のほとんどがクーラーの使用をはじめとする人間活動に由来するものであることは周知の事実です。先日、久々に「歳時記」に目を通す機会がありました。東京で生活していると余計に思うのかも知れませんが、その内容に何と懐かしさを感じたことか。裏を返せば、それだけ「季節」を素直に受け入れ、季節と共存する私たちがいなくなっていることを意味しているのでしょう。花鳥風月、雪月花に心寄せていた時代に生まれ愛された文化と現代社会。今あらためて向かい合わせてみることに価値観を抱く今年の“夏”です。

 今年の3月にコラーレでもお世話になった「プロフェッショナル太鼓術 打究人」Ajo、関口範章、茂戸藤浩司の3人と、8月4日から11日まで、ロシアに行ってきました。極東のハバロフスクとコムソモリスク(日本の文化に初めて触れる町とのことでした)で思いっきりアピールした3人でした。一見取っつきにくいと感じたロシアの人たちではありましたが、いったん自分たちの周波数にハマると大変な熱狂ぶりで圧倒されました。打究人のパフォーマンスにしびれたお客さん、総立ちは言うまでもなく、ステージに上がってきてしまうワケです。何と素直でわかりやすいことか。でも、これなんです、「古典空間」の意味って! ステージで展開されるアーティストの磨き上げられた芸と彼らのメッセージが、客席と一体になる空間。舞台と客席が熱い火花を散らすような、決して単に「SPACE」と訳すことのできない「空間」を、伝統・「古典」芸能の世界で創り出す。自分が十数年標榜してきたことをロシアの地で体感できると思いませんでした。自己表現の仕方の異なる文化とはいえ、正直フルえました。「音楽は国境を越える」という真実に直面し、人と人が理解し合えるその可能性を感じました。異文化間の相互理解が非常に難しいことは、なくならない戦争や拡大するテロが証明していると思います。以前このコーナーで国際交流、文化交流の意味を書かせていただいたことがありましたが、ますますその必要性を感じた旅でした。地球温暖化は世界的、全人類的な問題です。各国各地域の政治、経済、社会の事情を乗り越えて対峙しなくてはならない課題です。

 私たちの関係だけでも、9月には伝の会(長唄三味線)とあんみ通(津軽三味線)で韓国公演、10月には薩摩琵琶の坂田美子らのビカムで再びロシア公演、来年3月には、尺八の藤原道山と琴のみやざきみえこのイーストカレントでアメリカ公演が予定されています。その他、今年から来年にかけて、多くの日本のアーティストたちが海外公演を行います。まさに文化の出番なのです。

(2003年09月 COLARE TIMES 掲載)

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