ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の壱拾壱】「東京の雪」と「想像力」

2000年2月

 今日、東京で雪が降った!「雪だ、雪が降っている!」朝、カーテンを開けて思わずそう叫んでしまった。子供たちはわざと傘を外してはしゃぎながら学校へ急ぐ。「もしかして積もらないかな?」と、大人げ無くほのかな期待に胸が膨らむ……。スイマセン、所詮東京人なんてこんなもんです。たった2~3センチ積もっただけで交通 マヒの大騒ぎ。現代社会では、とても冬の風物詩としての雪を愛で楽しむ余裕なんてありゃしません。

 ところで、歌舞伎の世界ではこの“雪”をどうやって表現しているかご存じですか? 実は1センチ四方の四角く薄い紙を、布製のネットに入れて降らせているのです。しかし、これだけでは単なる“学芸会”。劇場空間を埋めるために抜群の効果 を発揮するのが、効果音としての大太鼓の音なのです。「雪音」といって、「しんしんと降る雪」「粉雪」「吹雪」「雪崩」等を打ち分けます。「ちょっと待った、雪に音なんかあるわけないだろ!」と言いたくなる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ドーン、ドーン、ドンドンドンドンドン……」と籠もったような音を聴いていると、雪の降る静けさが却って印象づけられ、舞い落ちる四角い紙が本当の雪のように見えてくるから実に不思議なのです。一度ハマルと、目を閉じても頭の中には雪が降ります。

 歌舞伎では、「水音」といって小川から大川まで、緩やかな流れから速い流れまで、その他「風音」「雨音」「雷」「波音」「滝音」等、自然の音を舞台下手の黒御簾の中、大太鼓等の打楽器や笛などで表現します。

 想像力を刺激する。これは素晴らしいことだと思います。今の世の中、24時間電気がついていて何でも見えている。逆に見えていないと安心できない。しかし、見えてしまえばそれで納得、そして完結。つまりそれ以上考える必要もない。

 見えない、わからない。だから、「どうなっているんだろう? どうやったらいいんだろう?」と、想像力=imagination を働かす。そして工夫する。創り出す。つまり創造=creation につながる。<imagination → creation>はからずも発音は同じ「ソウゾウ」。日本の伝統芸能の世界は、そんな「ソウゾウ」の産物の宝庫なのです。

(2000年02月 COLARE TIMES 掲載)

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