ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.50 イタリア2016 「UTSUSHI」

2016年9月

2年ぶりのイタリア公演は日伊国交150周年に当たり、「ラヴェンナ・フェスティバル」と「フローレンス・ダンスフェスティバル」への参加となりました。

蝉丸 徒然日記
6月11日、黒部宇奈月温泉駅14:32発の新幹線で東京に行き、山海塾事務所で書類を受け取り羽田空港から22:55出国。パリでボローニャ行きに乗り換え、ボローニャからはバスでラヴェンナに12日昼頃到着。ラヴェンナはイタリア北部アドリア海に近い町ですが、山海塾にとっては初めての町です。照明、音響スタッフと共に3人で「パラ・デ・アンドレ」という会場を下見に行き、翌日からの仕込打合せをしました。ここは劇場ではなく、仮設ステージと客席を有する巨大なコンベンションセンターで、屋根は透明プラスチック製です。ということは夜にならないと暗くならないので、照明のフォーカスやキューの打ち込みなどは午後9時から始めることになります。

13日朝9時から仕込み始めて気付いたのですが、舞台位置と天井から吊られているトラス位置があらかじめ受け取っていた図面と1mほどずれています。このまま仕込んでいくと照明とダンサー位置がかみ合わないため、急遽舞台美術の吊り位置を変えて対応しました。

夕食後、私と照明の鈴木が残って、夜中の3時まで8時間かけてフォーカス、打ち込みを済ませました。翌日は午後からリハーサル、夜9時半から公演、終演後撤去作業、夜11時には全て終わりました。

蝉丸 徒然日記
翌日からフィンランド、フランスと回り、7月7日、再びイタリアに戻りました。フィレンツェは1992年「UNETSU」野外公演以来25年ぶりとなります。その時のオルガナイザーが再び「UTSUSHI」の野外公演を企画してくれました。今回は小高い山間のフィエソルという地域に有る「テアトロ・ロマーノ」というローマ時代からの野外劇場で公演です。到着日に宣伝を兼ねて、私と松岡、百木で2時間のワークショップを行い、テレビ局が収録に来ました。

翌日午後5時から、照明、音響スタッフと共に劇場下見打合せを行い、夜11時から音響の相川以外全員で仕込みに行きました。この日は地元のバレエ公演が夜12時まで行われ、その撤去作業後の仕込みとなります。

バレエ公演を見て気付いたのですが、舞台前1m50cmほど、灯りが当たらず暗いのです。客席後方からの照明では遠すぎて、サイドライトのない舞台前は暗くなってしまうようです。完全な野外ですので吊り物の舞台美術は無いのですが、代わりに篝火を4カ所設置します。その位置を舞台前に変更し、アクティングエリアを奥に移動しました。

夜中の2時に他のメンバーをホテルに帰し、私と照明の岩村が仕事を続けます。照明スタッフはパリで鈴木から岩村に交代しました。野外に設置してある照明機材ですので、フォーカスにてこずったり、特定回路の電球が球切れを起こします。4時半頃夜が白み始めましたが、まだフォーカスが終わりません。午前5時半、もう照明の明かりが判別出来なくなった頃、ようやく終わりました。本来この後、灯りのゲージを決めてキューを打ち込む作業が有るのですが、基本データはフォーカス開始前に打ち込んで有るので、後は本番中に状況に合わせてゲージを上げ下げ出来るかどうかです。朝6時過ぎにホテルに戻り一眠り。

7月9日朝から音響の相川が仕事を始め、午後2時から全員劇場入りしました。日差しが強く舞台上のリノリウムが波打っています。暑さで照明卓が暴走しないよう、リハーサルは午後6時から開始しましたが、照明機材からの明かりはほとんど目視出来ません。ダンサーに位置を説明しながら、袖の出ハケなど確認しました。私はこの作品には出演せず、舞台監督を務めます。午後9時半からの公演に間に合うよう、篝火や松明の準備をして暗くなるのを待ちます。照明機材効果があまり期待出来ないので、公演終盤の篝火の状態が気になります。篝火はコラーレでは薪を使いますが、この作品では砂と油とアルコールを使います。

客入れ前に舞台上に仕込むのですが、暑さで揮発することを考慮して用意します。今回初めて松明を持つダンサーが居たので、本番前に実際に点火してレクチャーしました。

7月9日午後9時半開演ですが、直前に主催者挨拶が入ることが通達されたり、開演最終決定する人が舞台下手に居て上手側にいる私とコンタクト出来ないという状況が判明したりしました。舞台公演を生業としている立場からするとかなり厄介な状態に出くわしたのですが、満天の星の下で「さてどうしよう」と焦っていると、私の故郷・藤塚の獅子舞でも進行係を務める私にどんどん想定外の状況が生まれて来るのを思い出し「なるようになるか」と開演のキューを送りました。

途中音響のCDプレイヤーが故障するというアクシデントが有りましたが、篝火は予想以上の演出効果をもたらし、観客の反応は上々でした。終演後、舞台上でフェスティバル主催者から記念のブロンズ像授与式があり、観客も一緒になって夏のお祭り騒ぎとなり、なかなか撤去作業に入れなかったのですが、地中海沿岸の夏季野外公演はやはり楽しいと感じました。

 

写真上
管弦楽、オペラ、ダンス、民族音楽などの総合芸術祭「ラヴェンナ・フェスティバル」。山海塾は、「パラ・デ・アンドレ」という会場で、6月14日、「UTSUSHI」を上演。

写真下
1990年から続いている、フィレンツェの「フローレンス・ダンスフェスティバル」に参加。ローマ時代からの野外劇場「テアトロ・ロマーノ」で、7月9日、「UTSUSHI」を上演。

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