ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の百十参】一聴の価値あり! 今、講談が面白い!

2026年2月

 一人の語り手が、自らが背負った芸態独自の話術を駆使して物語を伝える……「語り手」が身一つで繰り広げる世界を、「聴き手」は想像力を思い切り膨らませながら脳裏に情景を描きつつ物語を楽しむ……シンプルながら両者は実に素敵な関係です。
 三味線と共に物語を伝える「 義太夫節 ぎだゆうぶし 」をはじめとする様々な浄瑠璃、寄席の三大話芸と言われる「講談」「落語」「浪曲」など、日本には実にたくさんの「話り芸」があります。またその伝統が、現代の朗読や読み聞かせ、ストーリーテリングなどに受け継がれていると言えるでしょう。
 それぞれの時代を生き抜いた人々は、ある時はニュースソース(情報源)として、ある時は娯楽として、これらの語り芸を受けとめてきた歴史があります。時代に刻まれた人々の足跡を、また世の中の最前線で起きている話題を、言葉の力と豊かな表現力で伝え続けてきたのです。

 さて、vol.9となる「パフォーミングアーツのエントランス」では、「講談」をお楽しみいただきます。
 落語よりも歴史が古いとされる講談。講談師が歴史上の出来事や人物像、またタイムリーな話題などを、七五調を基調にした日本語のリズムを活かした独特の調子で、小気味よく 張扇 はりおうぎ 釈台 しゃくだい を叩きつつ物語を描き出します。「講釈師 見てきたような 嘘をつき」「講釈師 扇で嘘を 叩き出し」などと言われてきましたが、どんな荒唐無稽な話でも本当の出来事のように思わせてしまうのも講談の魅力と魔力です。

  いくさ の模様を語る軍談、武士の活躍やエピソードを描く武芸物、実際の事件をもとに町人の世界を描いた世話物など多くの演目が読まれ続けてきました。「講釈師 冬は義士 夏はお化けで 飯を食い」という川柳がありますが、数々の演目の中でも「赤穂義士伝」などの仇討ちを扱った数々の演目や、幽霊や化け猫などが登場する怪談は人気を集めました。

 明治以降、講談が大きく人気を博した時代がありました。人気講談師の高座は、当時発達していた速記術で書き写し活字化して「講談本」として出版され、当時の若者たちが競って読んだそうです。その講談本を数多く出版した出版社こそ今の講談社です。しかしその後は、浪花節(浪曲)や漫才などの人気に押され、第二次大戦後はGHQにより仇討ち物などの上演を禁止されたことで大きな影響を受け、さらに追い打ちをかけるようにテレビの普及によって講談は衰退の一途を辿ることになります。そして現代……一時は「東西に落語家800人、講談師は80人」と言われ存続さえ危ぶまれた講談ですが、講談師たちの踏ん張りと努力により、若手の活躍にも注目が集まり、今では入門者も増えつつあります。

釈台と張扇と扇子は講談の必需品

 講談には強みがあります。あらゆる事象を“講談化”できることです。現代では、企業や組織の歴史、実在の人物の伝記、まちの由来などを各種イベントで、また個人レベルでは新婚夫婦の馴れ初めなどを結婚式の余興で披露するなど、講談師は活動の幅を広げています。また、現在多くの講談師が全国各地で講談教室を開催しています。参加者は、「講談の稽古でコミュニケーション術が高まり、家庭内、会社など組織内における人間関係構築に大きく役立った」と異口同音にその成果を語ります。つまり講談は「今に生きる」伝統芸能と言えるのです。
 時代のメッセージを確実に刻み、伝えてきた講談。今、講談という語り芸のおもしろさと価値に、世の中がようやく気付き始めています。

 今回黒部に訪れる宝井琴鶴さんは、明晰かつ気風の良い読み口に定評があり、幅広く活躍中。武芸物の“スタンダード”として人気の高い『寛永三馬術』より「出世の春駒」を口演します。一方神田山緑さんは、重厚かつスケールの大きい読み口で怪談に定評があり、小泉八雲作『耳なし芳一』を情緒豊かに披露します。

パフォーミングアーツのエントランスvol. 9 講談(宝井琴鶴 & 神田山緑) 2026年2月7日(土) 開場13:30 開演14:00 黒部市国際文化センター コラーレ(マルチホール)
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