ラレコ山への道:国際交流員「目からウロコ」

#07 ことわざ

2012年4月

We are all visitors to this time, this place.
We are just passing through.
Our purpose here is to observe, to learn, to grow, to love… and
then we return home.
(Australian Aboriginal Proverb)

人は皆このとき、この場所の来訪者である。
ただの通りすがりだ。
ここでの目的は、観ること、学ぶこと、成長すること、愛すること……そしていずれ帰らなければならない。
(アボリジナル・オーストラリア人の格言)

 アボリジナル民族は土地に強い思い入れを持っています。5万年経て変わらなかった半遊牧的な生活様式において、彼らは自分が土地によって生かされていることを心底理解していました。過酷なオーストラリアの環境の中、地域を周りながら採取狩猟のみで生き、なおかつ環境への影響は最低限に引き止めた彼らの知恵に基づく神秘的とも言えるこの格言には、説得力があると思いませんか。
 日本に来てからつくづく面白く思うのが言葉の違いです。イギリス人、オーストラリア人、アメリカ人が話す英語の微妙な違いであったり、日本語と英語の大きな違いであったりしますが、そういった違いは背面に必ずいる「人間」の文化、思想や見解の違いを反映しているから面白いのかなと勝手に思っています。日本語で話すと別人のように丁寧になる友人の国際交流員、大阪のレストランで水をこぼした際「めっちゃごめんなさい」と言うウェイトレス、「何やっとるん?」と駆けよってくる黒部市児童等を見てると思わず顔がほころびます。
 上の例でお察しの通り、私が特に興味を持っているのが、それぞれの文化の知識と知恵が凝縮されている(ように感じられる)格言やことわざです。「Tall poppy syndrome(トールポピー[背の高いケシ]症候群)」はオーストラリアでよく見られる社会現象です。日本語で相当する格言が「出る杭は打たれる」ですね。流刑植民地であったオーストラリアの人々はほとんどが元囚人でしたが、ゼロから始めなくてはならなかった彼らは機会均等を重宝し、権力や地位を振り回す人を妬みました。努力で成功を収める者にはもちろん敬意を払いますが、それを威張り傲慢な態度を示すものに対してオーストラリア人は今でも容赦ないです。意外なところで日本の謙遜精神とのつながりがあると思いませんか?
 他にも英語圏と日本が別々に生みあげた相当する格言・ことわざがいくつかあります。「Don’t count your chickens until they are hatched(卵から孵るまではニワトリを数えるな[=取らぬ狸の皮算用])」「The early bird catches the worm(朝早い鳥はミミズを捕える[=早起きは三文の徳])」「Ignorance is bliss(無知は至福[=知らぬが仏])」等、表現は違えど同じ思想に基づいています。英語を由来とする「豚に真珠」や「目には目を」(両方とも実は聖書から取ったもの)、「一石二鳥」「転石苔を生ぜず」等、自然と日本語に定着しているものも多いですが、これまた共鳴するものがある故ですね。文化の背景や現状が異なるものであっても、同じ人間として根本的なところで共通点があるのでしょう。
 日本語の格言・ことわざで私が好むのは、「備えあれば憂いなし」「急がば回れ」「石の上にも三年」「猿も木から落ちる」等です。日本人が重んじる努力、誠実さや慎重さといった美徳を反映していますが、いずれも英語で相当するものはないです(……と思います)。ちなみに英語で好きなのは「To every cloud there is always a silver lining(すべての雲には銀の裏がある)」で、「悪い状況にも必ず良いことはある」という意味です。
 最後に私の仕事にゆかりのある「翻訳」そのものに関してのことわざをポーランドからひとつ。

Translation is like a woman. If it is beautiful, it is not faithful. If it is faithful, it is most certainly not beautiful.
翻訳とは女性の様である。美しければ忠実ではない。忠実であるならば必ず美しくはない。

 ポーランド人サイコー!


目からウロコ

There was an American, a British, and an Australian…
あるところにアメリカ人とイギリス人とオーストラリア人がいました……。
と、ジョークにでも出そうな展開ですが、私の大切な国際交流員仲間です! 絶えず英語の違いから生じるミスコミュニケーションとバトルしてます。

(2012年04月 COLARE TIMES 掲載)

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