ラレコ山への道:国際交流員「目からウロコ」

#10 Quelques arpents de neiges… いくつかの雪の畑だけ

2013年6月

カナダ

■Bonne Saint-Jean!(ボンセンジャン!)
 
カナダは、多文化なだけではなく多言語の国です。カナダでは言語が沢山使われていますが、公用語は二つで、英語とフランス語。そして、フランス語を使う民族がいくつかいて、その中でも古フランス系カナダ人が最も多いです。
 仏語系の人口はカナダの約4分の1で、大部分はケベック州とその周りに住んでいます。母国語はもちろんフランス語で、生活など全部フランス語で行われます。英語が出来ない仏語系のカナダ人がかなりいて、英語が全く通じない地区があります。まるで日本人には想像がつかない存在です
 カナダのフランス語は、フランスのフランス語とかなり違います。フランスの植民地でなくなってから200年が経ったので、日本の方言と同じように、語彙も文法も発音も変わりました。フランス人がカナダのフランス語の映画を見に行ったら、字幕が必要だそうです。フランスからやってきたばかりの移民には最初は全く分からないそうで、日本の津軽弁のようです。カナダの学校で勉強するフランス語はフランス語の共通語ですから、フランスからの映画は字幕が不要です。しかし分からない表現がよく出ます。

■ケベック州
 ケベック州は、仏語系民族の中心となっていて、人口の大部分は「ケベコワ」という民族です。ケベコワ民族は、仏語系の民族のひとつです。私は、民族としてはケベコワです。
 カナダの公用語は英語とフランス語ですが、ケベック州の公用語はフランス語だけ。そのため、州営と民営の両方の企業は、フランス語でのやり取りが法律で定められています。フランス語があまりできない人は、就職するのがかなり難しいです。英語が通じるところもありますが、ケベック州の南の方だけです。英語の学校もありますが、英語系の人のためだけの学校で、ほかの学校は法律通りフランス語で行います。英語の授業以外では、英語での会話を聞いたことがない人はかなりいます。
 文化の面では、一般の北米と違います。共通語はフランス語。そして音楽やお笑いなどが大好きなで、文化人や芸能人をたくさん輩出しています。1960年代までキリスト教の影響で保守派が強かったのですが、1960年代以後は、多くの人が教会に反対したため、生活が非常に自由になり、北欧の生活に近くなりました。「政府は全国の寝室内の活動を定める権利がない(意味は「大人の性活動を定める権利」)」と語った有名なトルドー元カナダ首相はケベコワで、ケベック州の文化をよく納得させる言葉を言いました。できるだけ個人的な活動を規制しないようにするのがケベコワ人の常識で、ケベック州の法律にもなっています。
 一方、団体活動、特に経済活動は規制が多くあり、出来るだけ一般州民に利益になるように法律を定めます。そしてお互いに手伝うことが文化の原則で、政府は企業と個人の両方の力や税金などを合わせて色々活動しています。

■ケベコワと日本
 ケベコワの同級生は今、横浜市の国際交流員として仕事をしています。私はその友だちとよく話をして、前回の記事について話し合いました。しゃべりながら、同級生はこう語りました。「“君は日本人みたいだな”とか“とても早く日本に慣れたな”とか、そういうことをよく言われる」私も、黒部の人と会話したら、同じことを言われました。もちろん、私も友だちも日本語を勉強した外国人ですが、この言葉は他の日本語を話す外国人にもよく言うことなのでしょうか?
 「日本に慣れたわけではなく、もともとそう育てられただけ」と、同級生は思っているようです。私もそう思います。ケベコワ文化は日本の文化によく似ていて、生活常識は日本とあまり変わりません。違うところももちろんありますが、日本の文化の基本はケベック州に似ていて、ケベコワの人には理解しやすくて従いやすい文化です。ケベコワの特徴かな。

■フランスとの関係
 カナダの仏語系の人はフランス語が出来ると言っても、フランスとの関係はアメリカとイギリスの関係とほぼ同様です。今回の記事のタイトル「Quelques arpents de neiges…」は、フランスの有名な作家ヴィクトル・ユーゴーが言った言葉で、カナダでは有名です。カナダのことを「いくつかの雪の畑だけ」と表現した言葉で、フランス王国にとって不要な植民地だったということを表しています。英国の領域になってからはカナダの仏語系の文化が非常に変わり、文化としてはフランスと全く違います。
 私はフランス人といると、まるで外国人といるように感じます。今の関係は「兄弟民族」ではなく、「いとこ民族」といわれ、少し距離がある関係です。

■最後に
 
5月から宇奈月のセレネで、フランス語入門の講座を開きました。毎月最終の月曜日15時半から16時半まで行います。講座の最後に質問タイムを設けているので、フランス語を勉強したい人のいろいろな質問に答えますよ。
 Je vous en prie!(ジュ ヴ ザン プリー=よろしくお願いいたします!)


カナダ「ケベック州」基本データ

[人口]
約800万人(先住系:約1%、仏語系:約80%、英系:約10%、異系:約10%)

[面積]
約1,542,000平方km

[州都]
ケベック・シティー

[最大都市]
モントリオール

[世界遺産]
ケベック歴史地区、ミグアシャ国立公園

[食文化]
メープルシロップ、プーティン、アイスシード

[文化祭]
モントリオール国際映画祭、モントリオール国際ジャズフェスティバル

[出身]
シルク・ドゥ・ソレイユ、モントリオール交響楽団、セリーヌ・ディオン(音楽)、エリック・ガニエ(野球)、オスカー・ピーターソン(音楽)、レナード・コーエン(音楽)、シンプル・プラン(音楽バンド)、ヴォイヴォド(音楽バンド)


コラーレの前で

 ♪ダイネ ツァーウベルト ビンデン ヴィーデル ヴァース ディー モーデ シュトレンゲ ターイルト……5月19日、コラーレでの「名水の里 第九コンサート」に出演しました。ドイツ語で歌うのは難しかったですが、第九を歌うのは楽しくて楽しくて、大喜びになりました。やっぱり、喜びの歌ですね。ベートーヴェン先生は第九を上手に作曲しました。


「ケベックの日」のライヴ

 「ケベックの日」のライヴ。この日はケベック州の文化を祝う日で、メインはやっぱりライヴです。あちらこちらでライヴがありますが、最大のライヴは最大都市のモントリオールと首都のケベック・シティー。街同士がケンカにならないように、首都のライヴは前日の夜で、モントリオールは当日の夜に開催されます。両方楽しいですが、歴史上の理由があって、言葉はほとんど全部フランス語です。

(2013年06月 COLARE TIMES 掲載)

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