ラレコ山への道 蝉丸 徒然日記

Vol.19 ヨーロッパ夏のフェスティバル

2002年10月

7月、8月はフェスティバルの季節です。バカンスで地中海沿岸や山の中に人々が移動するので、その人達相手に野外ステージを使ったイベントがあちらこちらで連日行われます。今年の山海塾は南仏、ギリシャ、ウイーン、北イタリアのフェスティバルから招待されています。みんなが遊んでいるときに働くのが私たちの生業なのですが、フェスティバルは他の人たちの舞台を見ることが出来るので、勉強になりますし、交流も生まれます。

韓国から戻って来る船荷を待ってパリに航空便を出し、パリの倉庫の荷物と共に南仏のシャトーバロンに送ります。メンバーはパリからマルセイユの近くのツーロンまで飛行機で行き、車で山の中のシャトーバロンに行きました。ここで公演するのは3回目です。野外ステージと屋内の小さめの劇場、大きな稽古場が二つ、宿泊用に12の部屋、レストランが有ります。今回は「ひびき」という作品を上演しました。舞台全面に白砂を撒き水盤を配置して、6メートルの高さから水滴が4カ所落ち続ける舞台装置です。客席は円形階段状で屋根はありません。野外の敵は雨風に加えて直射日光です。公演は夜暗くなってから行うので、この時期お客さんはとてもいい風と夜景が楽しめるのですが、準備は大変です。雨が降るのはまれなのですが、万が一に供えなければ行けません。風や熱に弱いものは一度仕込んで撤去します。特に大きな混乱もなく、7月27日に1000人ほどの観客を動員して上演しました。

公演後、すぐ撤去積み込みを済ませましたが、実は次の公演地ギリシャが経済的な問題でキャンセルされたので、1週間休みになったのです。シャトーバロンが無料で滞在を許してくれたので、そのままバカンスになりました。みんな海へ行ったり、山を散策したり、夜は毎晩バーベキューで楽しみました。ところが後半は天気が崩れて大雨です。公演中でなくて良かった。

8月3日、ウイーンへ移動し、2作品の公演です。5年前にも参加したダンスのフェスティバルですが、ここの特筆すべき点はワークショップが同時に沢山行われていることです。ワークショップ参加者が同時に公演の観客にもなり、いろいろな出会いがあります。到着日に先輩に当たる室伏鴻の公演があったので見に行きました。この人の踊りを見るのは15年ぶりぐらいです。ホテルで日本人女性二人に会いました。一人はイリキリアンの、もう一人はフォーサイスのカンパニーで踊っている人です。二人ともワークショップと公演を行うそうです。山海塾はフェスティバルの終盤で公演するのですが、ワークショップは行いません。ミュージアムクオーターという文化施設の中にある仮設劇場で「うねつ」、道路を挟んだフォルクスシアターで「かげみ」を上演します。チケットの売れ行きがいいので追加公演することになったのですが、それも含めて4公演すべて売れ切れです。ミュージアムクオーターはかつて馬の調教や競技を行っていたところを文化施設に改装しているのですが、中庭に5年前にはなかった美術館が二つも建っています。仮設劇場と言いましたが、馬の競技場だった建物はそのままに、地下を掘り抜き500人収容の小劇場と楽屋をそなえ、その上に1000人収容の劇場を作りました。壁はそのままですので、馬の頭やハプスブルグ家の紋章である双頭の鷲のレリーフが残り、ガラスやステンレスを駆使した新しいエントランスとともに、とてもアーティスティックな雰囲気が漂っています。劇場の機構や客席は建物の基本構造からは独立し、仮設劇場で使われるトラスやホイストを使い、増設や撤去が出来る構造になっています。5年前とは客席と舞台の場所が入れ替わり、客席は雛壇構造で舞台が見やすくなっていました。フォルクスシアターは小さめのオペラ劇場なのですが、フェスティバルのために1階席の上に雛壇構造の1階席をかぶせ、2階のバルコニー席に繋げています。シャンデリヤを4つ外して、その穴からホイストを使い、照明トラスを吊っています。オペラ用の劇場でいかにダンスの舞台を仕込むか、見やすくするか、あの手この手を使っています。日本の劇場も20年ほど前までは同じような感じだったのですが、今はなかなかイレギュラーなことはやらせてくれません。劇場に行くとスタッフが「君たちのだよ」と指金を持ってきました。見ると米倉と書いてあります。大道具担当の米倉が5年前に忘れていったもので、思わぬ再会に当人は感激していました。
8月6・8・9日「うねつ」、10日「かげみ」公演、総観客数3700人。

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