ユーゴ・ラシャペル #24

Tintamarre(テンタマール)「騒音」
 
 8月8日は私の姪の誕生日で、そして2年前に私が黒部市に到着した日です。3年目を迎えます。短く感じるか、長く感じるか、どちらとも言えません。悲しくてつらいことも、楽しくて喜ばしいことも、たくさんあったからです。でも、この2年間で心地いい居場所を見つけました。それは、もっとも嬉しいことですね。今月は皆さんに紹介したいことがあります。
 黒部市では、「北方領土」という言葉をよく見えます。黒部に着いたときに、「どこだ?」という疑問が頭に浮かびました。先日、北方領土について聞く機会がありました。「昔、日本人が北海道根室市の近くにある島に移住した。多くは富山県出身で、特に生地出身が多い。戦中、ソ連軍に追い出され、根室市や他に避難した」それを聞いたら、カナダでも同じような話を聞いたことがあると思いました。

■ カナダ人という人は?
 6月21日から7月1日までコラーレで、カナダの「民族」や「○○系人」を紹介させていただきました。カナダに住む人は、自分のことを「カナダ人」とも言いますが、カナダ人ということは単に国籍だけを差します。他民族国家であるカナダでは、所属する「由来(先祖のこと、「○○系」と表記します)」と「民族(現在孤立共生している社会)」を持っています。例えば私は、『古フランス系カナディエン系(二重「系」も可)ケベコワ民族』の人です。
 そして「古フランス系」の中には、「アカディアン民族」という社会もあります。共通語はケベコワ民族と同じ「フランス語」ですが、ケベコワ人にとっては、なまっているフランス語です。カナダの大西洋岸に住んでいます。そして、アカディアン民族には、北方領土の人々と同じ歴史があります。

■ Le Grand Derangement「大規模な強制追放」
 アカディアン人は1603年、フランスからカナダの東南(現在のノバスコシア州の南とその周辺)に移住し始めました。100年間以上そこで生活し、新しい町と新しい生活を作りました。しかし1713年、イギリス帝国軍に攻撃され、イギリスの領土になりました。当初は古フランス系人が多かったので(当時1万3千人)、領事を共同にしていました。1755年になるとイギリスは、カナダのフランス領土をすべて奪い取るために、イギリス領土の古フランス系人を他に移住させようと、アカディアン人を強制的に追い出しました。そこから、アカディアン人の孤立した歴史が始まります。
 アカディアン人は世界中に避難しました。一部はフランスにもどり、一部は世界中の他のイギリス帝国の領土に避難しました。しかし、大多数は近くにあったフランス王国領土であった「カナダ」(現在のケベック州とその近く)に避難しました。その人たちが所有していた富と家はすべて奪われたり壊されたりしていたので、最初からもう一度生活を作らなければなりませんでした。一部は避難した領土の人たちに溶け込みましたが、大多数はケベック州の近くにあるニューブランズウィック州の北部を中心にして、新しい町と孤立した生活を作ることができました。

■ アカディアン民族の誇り
 現在も、新しく作ったその社会は生き延びています。イギリスからの謝罪は、今までもありません。2003年、カナダ総督からそれを認識する言葉だけをもらいました。住んでいたところに戻れた人はいますが、イギリス系人と共生しなければならなくなり、自分たちだけの社会でなくなりました。住んでいた地域はイギリス帝国の領土のままで、イギリス軍はそのままそこに移住して土地を治めたため、北米英帝国地方の一部として現在のカナダに編入されました。
 でも、アカディアン民族の誇りは残っています。イギリス系人と共生していても、自分の文化(母語のフランス語を含め)を現在まで守ってきました。残酷な歴史を乗り越え、新しい社会と大学「モンクトン大学」まで創り出しました。アカディアン民族による音がまだ世界中に響いています。そこで、8月号でアカディアンを紹介したかった理由が入ります。
 8月15日、日本はお盆ですね。この日、アカディアン民族とアカディアン系人にとっては、アカディアン民族の文化を誇り高く思い、町中に聞かせる祭りの日です。フライパンなどを叩いて大きな音を立て、自分の存在を騒音で響かせます。この日は「アカディアの日」と言い、「Tintamarre(大騒ぎ)」といいます。自分たちが存在しし続けていることをアピールするのです。

富山市にあるコミュニティハウス「ママのいえ」(写真は代表の笹野瞳さん)のイベントで、カナダのいろんな伝統的料理を作りました。先住民の英系人のパン「バニック」、先住民のとうもろこし、フランス系人の「ロティスリー・チキン」、カナダ中で食べられている生野菜など。とてもおいしくできました。
北海道の友だちと、8年ぶりに会いました。お母さんと一緒に、とてもいい時間を過ごすことができました。富山県に滞在したのはわずか一晩でしたが、富山市を代表する環水公園を見学して、その真ん中にあるスターバックスでお茶を飲みました。
8月15日「アカディアの日」、民族の中心となるカナダのモンクトン市で開催する祭りの様子です。フランスの国旗に良く似ている旗が見えますが、青いところの上には、星があります。これは、アカディアン人の民族旗です。この日、アカディアン人はこの旗を振りかざしています。

(2014年08月 COLARE TIMES 掲載)



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