ユーゴ・ラシャペル #22

名前と呼び方 ―世界は複雑!―
 
 私の本名をご存じですか? 日本と違い、とても長いです。「Joseph Richard Jose Ugo LACHAPELLE」と言います。カタカナにすると、「ヨセフ・リシャール・ヒョセー・ユーゴ・ラシャペル」です。長い名前でしょう? 今回は、私の名前のこと、そして世界の名前のことを書きたいと思います。

■ 五つもある名前
 私には名前が五つもあります。この名前の由来は、フランスです。
 フランスが共和国になる前の時代、戸籍の管理はキリスト教カトリック派の教会が担っていました。教会はきちんと戸籍を記録していましたが、パソコンのない時代ですから、住民の戸籍を管理するのは大変難しかったようです。名前を番号で管理すればラクでしょうが、人には番号を使いたくなかったので、代わりにうまい工夫をしました。
 まず名字(姓/例:山田)ですが、これは父の名字を使いました。私の場合は「LACHAPELLE」に当たります。そして名前(例:太郎、花子)は、名字の前に来ます。私にとっては「Ugo」にあたります。この二つで、日本式の姓名になります。日本で言う「山田太郎」は、私で言うと「LACHAPELLE Ugo」です。
 がしかし、私にはあと三つも名前が残っていますね。「Ugo」の前に来る二つの名前、「Richard Jose」は、「区別名」といいます。使う場面は限られていて、同じ姓名を持つ人を区別するための名前です。私の出身のモントリオールには、「Ugo LACHAPELLE」という名前の人が最低3人もいて、その中には私と同じ都市学を勉強した人もいました。彼と区別するために「Jose」を使っています。そして二つ目の名前「Richard」は、それでも区別できない場合……つまり、「Jose Ugo LACHAPELLE」が他にもいた場合だけ使います。では、最後に来る「Joseph」という名前の意味は? これは「性別名」といいます。昔は名前だけで性別がわからなかったため、男性は「Joseph」(イエスの父の名前)を、女性は「Marie」(イエスの母の名前)を頭に付けて区別するようになりました。つまり、私の五つの名前「Joseph Richard Jose Ugo LACHAPELLE」は順番に、「性別名・区別名2・区別名1・名前・名字」となります。
 このような名前の付け方は、王国であったフランスでできました。400年前にフランスからカナダにやってきた人たちは、戸籍のことを教会に任せ、フランスと同じような名前を使うことにしました。

■ 世界中の名前の形の複雑さ
 世界では国によって、名前の種類や数や順番が違います。英語圏によくあるミドルネームは、フランス語圏となる私にはありません。スペイン語圏では名字は二つあって、父と母の名前を両方付けます。ちなみにスペイン語圏で一つの名字しか持たない人は、「父のいない人」と呼ばれます。イスラム教アラビア語圏の国では、知っている先祖の名前をすべて入れるので、かなり長い名前が多いです。中国と韓国では名前は三つあって、名字と名前の間に世代名が入っています。インドの名前は非常に複雑、この誌面では大変説明しにくいです。
 日本より名前の数が少ない国もあります。北欧の島国、アイスランドです。名字は誰も持っていません。みんな下の名前だけです。区別が必要だったら、お父さんやお母さんの名前を使って父名か母名を作ります。30万人しかいない国だから、できることですね。
 そして、名前の並び方について。日本と同じように、名字から下の名前へ並ぶ習慣は、東アジアだけだと思っている人がたくさんいるかもしれませんね。でも中欧にあるハンガリーは、日本と同じく名字から並びます。あの人たちにしてみれば、下の名前が先頭にくる方が不思議だと思っているようです。

■ 日本での私の呼び方
 日本で、私のことをなんて呼べばいいか……。それは、多分一番難しいかもしれません。母国のカナダでの正式な呼び方は「Joseph Richard Jose Ugo LACHAPELLE」ですが、日本の住民カードには「LACHAPELLE Ugo Jose」と書いてあります。名字が最初で、次に下の名前で、最後に区別名です。でも日本では区別名を使う必要がないので、「LACHAPELLE Ugo」という形になります。従って、海外から来た私でも、日本式の「姓・名」の順番になっています。ローマ字は読みにくいので、カタカナで言うと「ラシャペル・ユーゴ」ですね。皆さんも私のことを、日本式で「ラシャペル・ユーゴ」と呼んでくださって構いません。逆に、それで呼んでもらう方が、仲間になったような気がしてうれしいです。私の「郷に入れば郷に従え」というモットーにつながります。
 さて、ここで皆さんへ豆知識をひとつ。日本人はよく、英語やフランス語などで名前を言うときに間違った使い方をしているので、覚えておいたらいいと思います。敬称「Mr.」や「Ms.」の使い方です。日本語の「〜さん」は名字に対しても(例:山田さん)、名前に対しても(例:太郎さん)、さらにフルネームに対しても(例:山田太郎さん)、違和感なく使います。しかしフランス語や英語の場合、敬称(英語で言う「Mr.」や「Ms.」など)と名前だけを組み合わせて使うことは基本的にありません。「Mr.」や「Ms.」は、名字だけかフルネームを組み合わせて使います。私の名前で言うと、「Mr. LACHAPELLE」や「Mr. Ugo LACHAPELLE」と呼びますが、「Mr. Ugo」とは言わないのです。名前はそのまま「Ugo」と呼び捨てにします。みなさん、覚えておいてくださいね。
 これから日本には、いろんな国の人がやってきます。私の「LACHAPELLE」のように、言いにくい名字が多くなることでしょう。私の場合は日本語らしいカタカナの発音「ラシャペル」にしました。最初は口が回らないかもしれませんね。難しいように感じるかもしれませんが、黒部の保育園や幼稚園の園児たち全員、ちゃんと「ラシャペル」と上手に言えるようになりましたよ。フランス語の本格的な発音でなくてよいので、皆さんも気軽にカタカナの「ラシャペル」という発音で呼んでくださいね。

5月20日にコラーレで、「多文化共生について」の第1回トーク&セッションを開催しました。1回目は「カナダの多文化共生」を紹介しました。日本という国は、どこへ向かっているのか、どこへ向かった方がいいのか、今後皆さんと一緒に考えたいと思います。2回目は6月3日、3回目は6月17日に開催します。ぜひお越しください。
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(2014年06月 COLARE TIMES 掲載)



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