Vol.51

パリ市立劇場 2016 「MEGURI」


 コンテンポラリーダンスの殿堂と言われるパリ市立劇場(テアトル・ド・ラ・ヴィル)で山海塾が公演するようになって、34年がたちます。最初の公演は「縄文頌」という作品でしたが、実はこのとき劇場は火災で舞台が焼け落ち、防火壁の向こう側は黒焦げになって使えなくなってしまいました。パリ市立劇場プロデュースですが、実際に公演した場所はパリ劇場(テアトル・ド・パリ)でした。
 それ以来共同制作14作品目になる「MEGURI」は、36年ぶりに日本で世界初演を行いました。12作品の世界初演はパリ市立劇場で行い、それに先立つ稽古はフランスでしてきたのです。13作品目の初演はフランス国立リヨン歌劇場でした。
 そしてパリ市立劇場はリニューアルのため、これから3年間の休館に入ります。その直前に山海塾「MEGURI」公演を6月23日から9ステージ行いました。


 フィンランド公演を終えて、6月20日パリに到着、すぐにパリ郊外の倉庫に保管してある道具類の積み出しです。5月に100年に1度という豪雨がパリを襲い、パリ南部が1週間にわたり水没しました。その時山海塾の荷物も倉庫と共に1mほど水没し、ダメージを受けたと報告を受けていました。「MEGURI」の舞台装置は日本から直接劇場に送ったので問題ないのですが、各作品に共通して使う道具類をはじめ、他の作品の舞台装置はほとんど水没してしまいました。特に幕類は水が引いた後もそのまま放置していたので腐った臭いがし、ほとんど捨てることにしました。
 6月21日朝から搬入仕込を開始したのですが、舞台床全面を覆う生成り色の地絣が腐って使えません。新しく製作するには4日かかるので初日に間に合いません。劇場スタッフがホリゾント幕などを提供してくれたのですが、色々検討した結果、倉庫で上に積み重ねてあって水没を免れた「UTSURI」の地絣を使うことにしました。黄土色なのでオリジナルと違うのですが、砂で覆うことや袖幕の位置などで違和感を無くしました。
 この作品を上演する上で最大の難関は、舞台奥に吊すプラスチック製の壁です。高さ6m20cm、幅13m50cm、重さ500kgあり、上演中に左右に揺すります。その奥には照明機材を1列15台3段桁吊りします。鉄のチェーンやポリエステル製スリングなどで吊るのですが、地域、時代によって安全基準が変わります。今回用意した物はいずれも以前この劇場で使用したことがある物ですが、今回の責任者はチェーンの強度が確認出来ないとして、太さ6mmのスチールワイヤーを用意し、スリングは火災対応のためスチール内蔵の物を出してきました。高さ調整が出来なかったので結局スチールワイヤーは安全確保用に使用しました。


 6月23日から7月2日まで9回公演ですが、この間フランスではサッカーヨーロッパリーグのチャンピオンシップが連日行われ、山海塾の上演時間とかぶっています。
観客動員はかなり厳しいと思われたのですが、938席の客席はほぼ毎日埋まり、最終動員率は99.05%を記録しました。これには劇場の支配人や制作責任者も非常に喜び、次回共同制作の約束を得ました。しかしこれからリニューアル工事に入るので、次回公演は3年後の2019年秋以降になります。すでに楽屋回りの工事は始まっていて、水回りが綺麗になったり衣裳部屋に間仕切りが付いたりしています。劇場スタッフは3年後どうなっているだろうか。そしてすでに還暦を過ぎている私を含めてみんなどうしているだろう。などと未来のことを考えています。


写真上)
パリ市立劇場(テアトル・ド・ラ・ヴィル)、舞台が見やすい急傾斜の客席。

写真下)
搬入口で腐った幕を見つめる……。

(2016年12月 COLARE TIMES 掲載)




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