Vol.15

EU通貨統合


 7月のメキシコ公演から5ヶ月ぶりに山海塾ツアーが始まりました。2002年1月4日から2月14日まで4作品、10都市、14公演のツアーです。回る国はフランスとルクセンブルグの2カ国だけなのですが、1月1日から統一貨幣のユーロが出回り、2月17日以降は旧貨幣は使えなくなります。
 日本では古い100円玉や500円札は今でも使えるように思いますが、ヨーロッパの国々は完全に流通 を止めるようです。これまでに3度ほどこのお金はもう使えないと言って、受け取ってもらえなかった経験があります。この通 貨の移行期間がちょうど今回のツアー期間と重なっているのです。1ユーロ(Eur)は6.55957フランスフラン(Ffr)です。もう忘れてもいいのですが、この6.55957という数字が頭にこびりつきました。商店では二つの通 貨で表示してあるのですが、タクシーやレストランなどではフランを出す人とユーロを出す人がいるので計算が大変ですし、お釣りはたいていユーロで帰ってくるので立替金の精算が煩雑になります。しかし、今後はとても楽になります。今までは国境を越えるごとに、今言ったような煩雑なことが起きていたわけですが、これからはその心配をする必要が無くなったわけです。3カ国ほど、まだ通 貨統合に同意していない国がありますが、そのうち一緒になるでしょう。3年ほど前の関税撤廃は今では普通 になっています。現在の国境は無人駅のような場所がほとんどでしょう。ところで硬貨の裏側のデザインはその国ごとにすることになっているようで、どんなのがあるか楽しみです。硬貨は「1、2、5、10、20、50セントと1、2ユーロ」の8種類、紙幣は「5、10、20、50、100、200、500ユーロ」の7種類です。もう偽札が出回っているそうで、100ユーロ以上のお札が使えなかったりします。もともとヨーロッパやアメリカでは高額紙幣はあまり市中では見かけませんし、受け取ってもらえないことが多いのです。出回り始めたばかりなので、きれいなお札が多くて気持ちがいいなと思っているのですが、これには説明が必要でしょう。フランスでは紙幣を10枚、20枚単位 で虫ピンやホッチキスで留めます。アメリカではペンやマジックで紙幣をチェックします。だからとても汚くなります。
 さて、公演の方ですが、ひとツアーで4作品というのは出演者やトラックの積み荷を考えるとかなり効率の悪いことになります。今回は初回のギャップというところと4つ目のブレストでダンサーを7人必要とする「かげみ」という作品でしたので、その場所だけダンサーが1人合流するという事になりました。旅費交通 費を考えると大変な出費です。三つ目のラニヨンでは「ひよめき」ですが一台のトラックには3作品は積みきれないので、輸送会社を頼んで舞台装置を運んだのですがかなり高額になります。7カ所目のアミアンは「ひびき」でその前にトラックはパリの倉庫で舞台装置を積み換えているのですが、新しくツアーに参加している照明家はその作品を良く知りません。ここの2回の公演のためだけにいつも一緒に仕事をしている照明家を京都から呼びました。これも大変な出費です。そしてこの問題はそれぞれの主催者には何の関係も無いことなので山海塾内部で処理しなければなりません。これも総合的にはうまく乗り切ったのですが、そのしわよせか、2カ所でホテルと劇場の送迎用に車だけ提供されて運転は自分たちでしなければならないことになりました。これをコラーレにたとえると、劇場の主催事業でフランス人出演者達を宿泊させるためのホテルが手近になく魚津にホテルを確保して、そこからの通 勤用に車を一台ホテルに置いておくということです。スタッフやダンサーなどの時間割が違うので一日に4往復することになります。主催者は日本とフランスでは車の走る車線が違うことやハンドルの位 置が反対だという事を知らないようです。知っていてもそれがどれほど重要な問題かという認識はないようです。イギリス人がフランスで運転するのと同じ状況ですのであまり気にしないのかもしれません。実際私にとっては何の問題もなく運転できますし、そのために国際免許を持ってきているのですから。でも忠告しておきますが、日本人がレンタカーでパリ市内を普通 に運転は出来ません。通行帯が左右逆だということを体が覚え込むには一週間はかかるでしょう。またその国独特の交通 モラルがあります。私は20年以上いろんな国を運転ばかりしていましたから経験として体が覚えています。説明するのは難しいのですが、たとえば右優先ルールの絶対性やロータリーのもどかしさなど「何でそうなるの!」ということはいっぱいあります。「郷に入らずんば郷に従え」だったかと思いますが、劇場での仕事も同じです。いつまでも外タレ(外国人タレント)扱いされるのも問題ですが、特別 な外タレとして扱わせるようにするのも仕事を円滑に進める上では重要です。
 最後の公演地セルジーを終えて明日日本に帰るのですが、一週間後には単身ベルギーのモネ劇場にオペラの仕事で行かなければいけません。一週間、時差はそのままにしておいて家族や仲間と過ごします。

(2002年04月 COLARE TIMES 掲載)



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