ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の六拾七】今、求められるカタチ

2011年7月

震災から3ヶ月、世の中は復興に向かって確実に“前向き”です。「自粛モード」でいわゆる「歌舞音曲」がはばかられた時期を乗り越えて、様々なジャンルの芸能人、芸術家たちによる、むしろ積極的な被災地訪問が相次いでいます。そんな中で真に「求められるカタチ」とは何かという問いも耳に入って来ます。どんなタイミング、場所、状況で演じられるかを選択、吟味することは必須と考えられます。例えば、仮に素晴らしい音楽でも、その時不要な方々には「騒音」にしかならないでしょう。

先日、被災地で行った慰問演奏に違和感を覚え、その後、敢えて楽器を持たずに現地に赴き、ボランティア活動のみに従事してきたというある邦楽若手アーティストの話を聞きました。衣食住、つまり日々の生活の建て直しや向上をメンタル面から後押しする役割でお役に立てるとするならば、日々刻々と変化する状況を鑑み、柔軟かつ積極的に実践を通してあるべき正解を求め続ける姿勢こそ大切なのかも知れません。

5月5日、西新宿の高層ビルの谷間にある旧小学校を改装した文化施設・芸能花伝舎の体育館で「邦楽ワンダーBOX!」という企画を実施しました。東京都主催の伝統芸能フェスティバル<東京発・伝統WA感動>の一環で、「聴いて、唄って、弾いて、吹いて。邦楽のカッコ良さにふれませんか?」をキャッチフレーズに、一昨年からこのような普及型イベントを毎年開催しています。

若手講談師・神田京子さんの「邦楽辻講釈」の後、箏、三味線、琵琶、胡弓、尺八、笛、鼓、太鼓などの若手演奏家の皆さんが行うミニコンサートを観て聴いて、その後「イイな! やってみたいな!」思った楽器コーナーに行くと、一線で活躍中の演奏家が構え方や音の出し方を直接指導してくれます。一角には楽器製作実演コーナーが設けられ、箏の職人さんの作業を間近で見ることができるなど、盛り沢山の内容。ラストは、吉田兄弟の良一郎さんを中心に結成されたユニット「WASABI」よるライヴで締めくくってもらいました。体育館を丸一日、日本の楽器の玉手箱に変貌させてしまおうという意図で進めたイベント。開催が危ぶまれた時期もありましたが、お陰様で幅広い年齢層の方々がご来場くださり、邦楽器の魅力を充分に楽しんでいただけたようです。

学ぼう、鑑賞しよう……ではなく、“カッコイイな!”“面白いな!”という入り口をつくることこそ「求められるカタチ」なのではないかと改めて確信し、引き続き自治体の文化事業に携わる皆さんと共に、邦楽に普及に向けての模索は続きます。

日本の擦弦楽器・胡弓を体験する少年と指導する若手奏者・木場大輔さん

日本の擦弦楽器・胡弓を体験する少年と指導する若手奏者・木場大輔

かわいい音符の幕で飾られたお囃子のブース

お囃子のブースでは、こんな光景が!

(2011年07月 COLARE TIMES 掲載)

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