ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の六拾弐】暑い夏、熱く踊る。

2010年9月

『弧の会(このかい)』という“男性だけ”の舞踊家集団

憂(うれ)うるだけ余計疲れるこの暑さ……いや熱さ! しかしながら、夏は暖房、冬は冷房がヒトの身体には良いようです。自然と対峙(たいじ)する西欧的発想ではなく、自然と一体化することこそ生きる術(すべ)とする、東洋的発想に立ち返ってみるよい機会なのかも知れません。水分補給を忘れず、熱中症にだけは気を付けつつ乗り切りたいものです。

音楽の世界では、受け継いだ伝統を“今”という時代のフィルターを通して、イキイキと表現する若い演奏家の活躍が目立っていますが、注目すべくは音楽だけではなく、日本の伝統的身体表現の世界にも新しくも刺激的な展開があるということです。

日本の踊りと言うと広くは、平安時代の宮廷舞踊である「舞楽(ぶがく)」、舞踊的要素の強い「能」、各地域に伝わる「民俗舞踊」等々、実に多種多様ですが、いわゆる「日本舞踊」と聞いてイメージされる世界。『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』の華麗な女形、『鏡獅子(かがみじし)』の勇壮な獅子の髪洗い、『勧進帳(かんじんちょう)』の弁慶の飛六法(とびろっぽう)であったり……歌舞伎舞踊=日本舞踊であり、歌舞伎役者の必修科目が日本舞踊であることは、お好きな方であればご存知の通りです。また、さまざまな「しきたり」や数々の流派が存在し、家元制度の厳しさが残っている世界として、少々敷居の高さを覚えたり……その受けとめ方も多種多様です。ちなみに、家元制度という明文化された「制度」は存在しないのですが、先入観から一方的に批判するのではなく、芸の伝承システムとして評価すべき点は評価し、現代社会に合致する維持の方法を模索することが課題のようです。

ヒトの「身体」を、「動き」をいかにカッコ良く見せるか、いや魅(み)せるかを追求してきたのが日本舞踊。ハマると舞踊会に足繁く通い、さらに自分でもやってみたくなる衝動にかられます。私には、日常生活の立ち居振舞いにすぐにでも取り入れたいカッコイイ自分の見せ方等々、実に実用的な方法論の宝庫と思えてなりません。

そんな日本舞踊を熱くする男たちに出会いました。幼いころから修練を重ね、自らの舞台のみならず、普及活動にも力を注ぐ12名。流派を超えて結集した『弧の会(このかい)』という“男性だけ”の舞踊家集団。一見暑苦しそうですが、さにあらず。「颯爽(さっそう)」という言葉がぴったりのカッコイイ兄貴たち(!)なのです。その特長は一言で「シンプル」。何も飾らない舞台に照明による演出が基本。衣裳や鬘(かつら)、化粧を施さず「素踊り群舞(すおどりぐんぶ)」をコンセプトに創作される演目は、迫力とスピード感、そしてユーモアに満ち、客席を飽きさせません。長野県諏訪神社で7年に1回行われる奇祭「御柱祭(おんばしらまつり)」を題材に創作した作品で、平成20年度文化庁芸術祭舞踊部門で優秀賞を受賞するなど、今まさに旬の表現者たちであると言えましょう。

美しさを加点するのではなく、余計なものを削ぎ落とし原点の美を追求する姿勢こそ、「伝統」を見直し、現代的に「伝統」と向き合うひとつの方法として意義を感じます。長い歴史をもつ日本舞踊。そのイメージを捉え直し、原点の優れた一面に注目することで、新たな入り口が発見できるはずです。敷居の高さを乗り越えて是非ご覧頂きたい日本舞踊の世界。「おどり」で魅せるカッコイイ男たちは EXILE だけではないのかも知れません。

→→『弧の会』ホームページ

『弧の会(このかい)』という“男性だけ”の舞踊家集団

『弧の会(このかい)』という“男性だけ”の舞踊家集団

(2010年09月 COLARE TIMES 掲載)

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