ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の伍拾参】光陰矢の如し 今年もあと364日! 今年は鶴亀で

2009年2月

 2009年の幕が開きました。「光陰」とは月日や時間を意味するそうですが、加齢する毎に「光陰矢の如し」を心から実感します。恒例の元旦に行われるイベントで集合した朝、「あけおめ! ことよろ!」のあと、少々ヤケクソな気持ちで「今年も残すところあと364日ですぜ!」と古典的な漫才のネタを若いスタッフに振ったら思いっきり引かれました。

 月の異名では1月を「睦月」と言います。「みんなが仲睦まじく新年を祝う月」と言うことなのでしょうか。500年前、1000年前、長生きをするということには大変な意味があったのではないかと思います。医療と言ってもそれは現在の技術とは比較にならないもので、加持祈祷=僧侶や修験者による悪霊退散のための祈りによって対処されていました。つまり病や死は、死霊や生霊、つまり悪霊がとり付いて起こすものと考えられていたのです。悪霊に対しては、山中で厳しい修行を積み自然の持つエネルギー=プラスの霊力を身につけた僧侶たちが悪霊と対決するわけです。したがって病気の回復=悪霊退散を意味しました。『源氏物語』や『枕草子』をはじめとする今から約1000年前に成立した古典文学等にはたびたびそんなエピソードが出てきます。

 また、戦が続き、治安も悪く、人の死が日常であった時代です。やはり長寿ということに大きな価値観を抱いていたはずです。それゆえ「松竹梅」「鶴亀」など長寿の象徴である動植物が有り難がられたのでしょう。門松も、「我が家は今年も無事に新しい年を迎えられた、家族も無事に歳を重ねることができた」という長寿に対する感謝の念のあらわれなのかも知れません。

 能楽で、謡(能の声楽面)のお稽古を始める時、真っ先に習うというのが『鶴亀』。長唄や常磐津にも翻案されてたびたび上演されています。「♪亀は万年の齢を経、鶴も千代をや重ぬらん、千代のためしの数々に何を引かまし姫小松、よわいにたぐう丹頂の鶴の羽袖をたをやかに千代をかさねて舞遊ぶ~」これは長唄の詞章ですが、ちょうど鶴と亀が登場して舞い踊る場面。ほか、お目出度い言葉のオンパレードです。

 今年は正月イベントが何と1件のみ……昨今の信じがたい不況の波に、呑まれるのか、うまく乗り切れるものなのか、皆様と同様、今年は踏ん張りの年であることは間違いないようです。それ故か、無駄が除かれて真の本質と向き合うことが求められている感を抱きます。易きに流れる我々人間にとってはエネルギーの要る作業かと思いますが、これまた踏ん張り時なのでしょう。

 ところで、言葉には事態を一変する力がある、つまり言霊信仰です。「鶴亀」を連発して“明るく”頑張っていきたいものです。

東京ドームシティ ラクーア野外ステージで行われた、和太鼓兄弟ユニット『は・や・と』による太鼓の打ち初め

東京ドームシティ ラクーア野外ステージで行われた、和太鼓兄弟ユニット『は・や・と』による太鼓の打ち初め。

東京ドームシティ ラクーア野外ステージで行われた、和太鼓兄弟ユニット『は・や・と』による太鼓の打ち初め

(2009年02月 COLARE TIMES 掲載)

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