ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の百】感謝とエール

2019年7月

『伝承・普及・創造』……伝統芸能と現代社会を結ぶ取り組みに不可欠な要素と常々考えてきました。

過去に産み出され、時代の荒波に呑まれつつも洗練を重ね、今という時代に至るまで継承されている事に価値を感じます。今年で5年目を迎える『とやまのたから2019』。富山県内の郷土芸能にスポットを当て、その芸能を継承する「街」自体を紹介し合う構成で、第1回は2015年、コラーレで実施。黒部の「明日(あけび)の稚児舞(ちごまい)」と砺波(出町)の「子供歌舞伎曳山(ひきやま)」をとり上げました。伝承に取り組む子どもたちの充実感に満ちた表情が思い出されます。今年は7月7日に滑川市民会館で、滑川の「新川古代神(にいかわこだいじん)」、八尾の「越中おわら節」、南砺の「五箇山民謡」の競演。郷土芸能の宝庫・富山県ならではの文化事業です。

昨年コラーレで初めて人形浄瑠璃・文楽が上演されましたが、確立された揺るぎない表現技法、多くの耳目を肥やし続けてきた古典作品の“忠実なる再現”に触れることも大きな意味があります。「伝承」あってこその伝統芸能です。

いかにすばらしい表現でも、「普及」を強く意識し“踏み込んだ”活動をしなければ、残念ながら同時代性に欠ける伝統芸能というジャンルは、やがて見向きもされなくなり消えてゆくのです。芸能がなくても人は生きては行けますが、衣食住を保持する精神的エネルギーに昇華し得るからこそ、芸能の存在意義は大きいと言えるのです。伝統文化を発信する側は、「楽しい・面白い・カッコいい」を旨に伝え方の工夫が求められています。

コラーレが実施している『パフォーミングアーツのエントランス』で、昨年は「義太夫節」がとり上げられました。市内小中学校でのアウトリーチ公演に引き続き、一般の皆さまを対象にレクチャー&デモンストレーションが行われました。人形浄瑠璃・文楽や歌舞伎を支える三味線音楽として欠くことのできない義太夫節の価値を、緊急感と笑顔がほど良く交錯するマルチホールの空間で体感していただきました。

『平家物語』の冒頭「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声 諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり」……鎌倉時代を象徴する「無常」と言う言葉に思いが至ります。常に物事は変化変遷を続けるものである……戦に明け暮れ、医療も乏しかった時代、明日の命も風前の灯火(ともしび)である日常を肯定せざるを得なかった人々の壊れそうな心を支えた言葉なのかも知れません。時代と共に価値観も変化するゆえ、“忠実なる再現”を繰り返すだけでは同時代性を保ち続けられない、と読み換えることもできそうです。時代と対峙し、表現や作品に新たな価値観を注入する「創造」に取り組むことはさらに求められるでしょう。

2011年にコラーレで行われた日本舞踊家集団・弧の会による『コノカイズム』公演。伝統的な身体表現を基軸に創作された『御柱祭(おんばしら)』の圧倒的迫力に客席が酔い痴れたことは脳裏に刻まれています。

1989年(平成元年)に古典空間を設立して以来、なぜか想いと姿勢が変わることはありませんでした。しかし30年の歳月は、伝統芸能を取り巻く環境を大きく変えました。特に『伝承』を可能にする社会構造は激変してしまいました。この現実は、『伝承・普及・創造』という概念の更なる深化、そしてより明確な意識化を私たちに迫っているようです。1995年(平成7年)の開館以来、伝統芸能の現代的展開を共にしてくださったコラーレに改めて感謝しています。同時に、黒部の皆さまと黒部という地域の活力源となる「文化」の発信拠点・コラーレの発展と素晴らしき未来を心より願っています。




古典空間 古典空間
2015年10月18日、コラーレにて「とやまのたから2015 砺波×黒部」

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