ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の参拾四】未来への潮流 Part.2

2005年2月
 子供たちのキラキラ輝く笑顔を見ると、楽しくも、嬉しくも、何とも素敵な気持ちになります。自分にとって、初めて見るもの初めて聴くものに対する素直な反応は、こんなにも人間の顔を輝かせるものなのかと思わされます。言葉による理屈を超えて、何かに夢中なっている、心が何かに感じている、そんなことができる空間に身を浸す時間をたくさん作ってあげることが大人の努めなのかも知れません。

 このところ学校に訪問しての公演が続いています。

手を取りながら三味線の弾き方を教えてもらっている男の子  昨年の11月19日に、「JASRACコンサート in 沖縄 ~未来への潮流~」(COLARE TIMES 1月号で紹介)のプレイベントとして、「邦楽レクチャーコンサート」が沖縄で行われました。新進気鋭の箏奏者・中井智弥(25歳)と尺八奏者・岩田卓也(24歳)。共に東京藝術大学で学び、ユニットを結成して間もない二人ですが、伝統的な音楽や楽器を、「今」を生きる自分たちのフィルターを通して表現し、少しでも多くの人たちに触れてもらうための努力は惜しまないという気持ちを強く持っている頼もしい若手です。11月とはいえ燦燦と照らす太陽と青い海を見て「わーっ、沖縄みたい!」などと冗談を言い合いながら、午前中に中頭郡勝連町立比嘉小学校、午後には沖縄市立山内中学校(あの ORANGE RENGE の出身校!)を続けて訪問しました。比嘉小学校は、全校児童30名ほどの島の小さな学校。音楽室の壁に、当たり前のようにズラーッと三線が掛かっている光景を目の当たりにすると、音楽的環境の違いを身につまされます。初めて目にする日本の伝統楽器に目を白黒させながら、見て、聴いて、触れて、感じて……共に楽しんだ60分でした。

みんなの前で楽器を演奏してみる三人の男の子たち 三味線の種類の説明を行っているところ  今年に入って、茨城県の美野里町にある四季文化館「みの~れ」が行うアクティビティー事業が現在進行形です。ホール自体が敢えて自らのホールを離れて行う事業展開。公共ホールが企画し実施する学校への出前公演です。昨年までは洋楽器が中心だったそうですが、今年初めて邦楽器で行うことになったそうです。長唄三味線<伝の会>と津軽三味線<あんみ通>が町内の小学校を巡回中。1コマ45分の授業を1日2~3時間、4年生から6年生の各クラスの児童が入れ替わり立ち替わり音楽室で。音響装置を一切用いずに演奏者の周りを囲んで見聴きする演奏と体験コーナー。1クラス30名程度の児童数。三味線の“さわり”の音をナマで体感してもらうには最適な人数かも知れません。「ナマで三味線の演奏を聴くのが初めての人は?」という質問に、約9割の子供たちが元気に(?)一斉に手を上げる現実。この数年、各メディアで度々採り上げられるようになった邦楽器ではありますが、沖縄の三線のように「生活の一部」に位置づけられるまでの道のりは遠いなぁと、しみじみ実感しつつも、各地域の文化の発信基地として機能するべき公共ホールの「ひとつのあり方」として高く評価されるべきであると思いました。

 今年も伝統芸能の世界、そして公共ホールの事業展開に「未来への潮流」を感じられる年でありたいと心から願っています。

※三味線の「さわり」
絃の振動に敢えて障害物(=差し障り)を設けることで、ビ~ンという独特の倍音を発生させます。この音こそ三味線独特の魅力なのです。琵琶にも「さわり」があります。

(2005年02月 COLARE TIMES 掲載)
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