ラレコ山への道 小野木豊昭 古典空間への誘い

【其の参拾】アメリカの桜?

2004年5月
 今年は随分長きに渡り、桜に親しむことができました。2月の沖縄、3月はサンディエゴとシアトル、そして4月の東京……。『伊勢物語』に「散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか久しかるべき」(桜は惜しまれつつ散るからこそ素晴らしいのだ。この世に永遠に続くものなんてないのだから)という和歌があります。毎年、桜吹雪を眺めながらこの意味をかみしめる私ですが、「所変われば」とは言え、結果的に桜の追っかけをしてしまった私は、何て未練者なのでしょう。

EAST CURRENTの様子  嘉永六年(1853年)ペリー率いる米艦隊(黒船)四隻が浦賀に来航、フィルモア大統領の親書を手渡して日本に開国を要求してきました。「泰平の眠りを覚ます蒸気船(上喜煎)たった四はい(4杯)で夜も眠れず」とも詠われ、世の中は大混乱。翌、安政元年(1854年)横浜にて幕府と日米和親条約を締結、幕府は下田、箱館の開港をはじめとする条件を認めることになるのです。……というわけで、今年は「日米交流150周年」。日米の各地で、記念イベントが開催されています。その一環として行われた国際交流基金主催の日本文化紹介派遣事業として、尺八の藤原道山と琴(※)のみやざきみえこのユニット<EAST CURRENT>によるアメリカ公演が実現しました。

 3月10日に出発、翌11日はサンディエゴでワークショップと公演、12日にはメキシコのティファナで公演、14・15日はシカゴで公演、18日はスポケーンでの公演、20~21日はシアトルで公演と子供対象のレクチャーデモンストレーション、23日はフェニックスで公演、そして25日に帰国。

 アメリカは広い! 公演のない日はひたすら移動に次ぐ移動、そして会場に着くや否やの仕込み。公演後はレセプション等、地元の皆様との交流。息つく暇もありません。

尺八のレクチャーを受ける皆さん  しかし、伝統文化による「国際交流」というダイナミックかつ意義深い仕事をさせていただいている充実感は格別なものでした。様々な人たちとの出会い、とくに限られた時間と条件のもとで進められる現地スタッフとのコラボレーションはエキサイティングそのもの。舞台、音響、照明、その機材の管理や仕事の進め方等あらゆる局面において、いわゆるジャパニーズ・スタンダードが通用しない世界。待ったなしの開場時刻に気を配りつつ、目の前に存在する難問を受け入れ、異なる価値観と向かい合い、乗り越え、そして観客のスタンディングオベーションを目の当たりにできたことは、アーティストや私たちスタッフ共々、感動を越えたかけがいのない蓄積でした。

「すてきな演奏をありがとう」  良くも悪しくも様々な問題を抱え続ける“伝統”を持つ日米関係。とかくクローズアップされるのは政治・経済面ですが、一般のアメリカ市民の日本観(各都市によって大きく異なる!)に直接触れることができたことは大きな収穫でした。来年も平和裡に満開の桜が堪能できる事を祈りつつ……。

琴=本来、弦楽器を総称して「琴」と言いました。いわゆる現在の十三絃の楽器は「箏」なのですが、みやざきみえこは敢えて一般化した 「琴」を用いています。

(2004年05月 COLARE TIMES 掲載)
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